会議の録画とAI議事録をチームに入れたい。そう相談したら、情シスからこう聞かれた。
「その録画データは、どこのサーバーに保存されますか」 「取引先の技術情報が出る会議も、録るんですか」
この記事では、主要3ツールの保存先の違い、見落とされやすい構成上のリスク、そして社内説明にそのまま使えるチェック項目を整理します。
まず結論|主要3ツールの保存先マップ
会議ツールに内蔵された録画機能は、それぞれ保存先が決まっています。利用者が選べるものではありません。
| ツール | 保存先 | 備考 |
|---|---|---|
| Zoom(ローカル録画) | 録画した本人のPC内 | MP4形式で保存される |
| Zoom(クラウド録画) | Zoomのサーバー | 有料ライセンス限定。初期容量5GB |
| Google Meet | 主催者のマイドライブ内「Meet Recordings」フォルダ | 会議ごとにサブフォルダが作られる |
| Microsoft Teams | チャネル会議は SharePoint、それ以外は OneDrive | 会議の種類で保存先が変わる |
| 端末側で録るアプリ | 利用者が選べる(ローカル/クラウド) | ツールによって異なる |
誰がアクセスできるか
保存先とセットで確認されるのがアクセス権です。
Zoomのクラウド録画では、アカウントのオーナーと管理者が、ホストの操作範囲を組織として制御できます。共有の可否、自動レコーディング、ダウンロードできるユーザーの範囲を有効化・無効化し、設定をロックすることも可能です。視聴前にユーザー認証を要求したり、共有リンクにパスコードを求めたりする設定もあります。
この「管理者が組織として制御できる」という点は、稟議を通す側にとって重要な材料になります。
見落としやすいのは「主催者個人のドライブ」に入る構成
保存先の話で最も見落とされやすいのが、ここです。
主催者が異動・退職したらどうなるか
つまり、その人が異動や退職でアカウントを失えば、そこに置かれていた会議記録の扱いが問題になります。組織の資産として蓄積してきたつもりの録画が、実際には個人アカウントの配下にぶら下がっていた、という状態です。
導入から数年経ってから気づくタイプの問題なので、最初にルールを決めておく価値があります。
ストレージ上限に当たると録画自体が止まる
「録れているはずが録れていなかった」という事故は、この条件が原因で起きることがあります。重要な会議の前に容量を確認しておく、という運用が必要になる場面です。
対策として決めておくこと
難しいことをする必要はありません。録画を残す会議については、次のどちらかを決めておくだけで、かなりの部分は防げます。
- 録画する会議の主催者を特定のアカウントに固定する
- 録画後、共有ドライブなど組織で管理する領域へ移す運用にする
もう一つの保存先|AI議事録に渡した音声はどこへ行くか
文字起こしや要約のために、音声データが外部のAIサービスへ送られる場合があるからです。録画ファイルは自社のドライブにあっても、音声は別の事業者を経由している、ということが起こり得ます。
確認すべきはこの4点
AI議事録ツールを検討するときは、次の4点を確認してください。
- 入力データが学習に利用されないと明記されているか(オプトアウトが明文化されているか)
- データの所有権がユーザー企業側にあるか
- 解約時にデータが確実に削除されるプロセスがあるか
- 漏洩が発生した場合の責任範囲
クラウド型のツール、特に無料プランでは、入力された音声やテキストがAIの精度向上のための学習データとして再利用される可能性が指摘されています。新製品の情報や人事評価といった内容を含む会議であれば、ここは避けて通れない確認事項です。
「サービス向上のために利用する場合があります」は要確認
利用規約でよく見かける表現です。ただしこの一文だけでは、具体的に何を指すのか分かりません。学習データとして利用される可能性があるのかどうかを、書面で確認しておくのが確実です。
学習への利用を明確に否定しているか、あるいは完全に拒否できるオプトアウト設定が用意されているサービスを選ぶ、という判断基準になります。
社外秘を含む会議をどう扱い分けるか
すべての会議を同じ扱いにしようとすると、いちばん厳しい条件に全体を合わせることになり、運用が回らなくなります。
会議を3段階に分けて保存先を決める
| 区分 | 会議の例 | 保存先の方針 |
|---|---|---|
| 社内の一般的な会議 | 定例、進捗共有、社内研修 | クラウドで一元管理してよい |
| 顧客情報を含む会議 | 商談、顧客ミーティング | 保持期間とアクセス権を絞る |
| 高機密の会議 | 取引先の技術情報、人事評価、法務 | 端末内に留める判断があり得る |
この3段階を先に決めてしまえば、ツール選定の議論はぐっと楽になります。
ローカル保存という選択肢
3段目をどう扱うかで、選べるツールが変わります。
会議ツールに内蔵された録画機能では、保存先を利用者が選べません。Meetなら主催者のドライブ、TeamsならOneDriveかSharePointに、自動的に置かれます。「この会議だけは端末内に留めたい」という選択ができない仕様です。
Qurecoの場合、無料版は録画がローカル保存です。Proプランではクラウド(AWS S3)への自動バックアップが加わり、AI議事録の生成も使えるようになります。会議ごとに使い分けられる構成です。
なお、Proのクラウド保存も外部のクラウドストレージである点は同じです。自社だけが特別に安全という話ではありません。判断材料として正確にお伝えしておきます。
クラウドが劣るという話ではありません
ここまで読むと「ローカル保存が安全」という結論に見えるかもしれませんが、そう単純ではありません。
クラウド保存には、ローカル保存にはない統制手段があります。管理者による一元的な権限管理、一定期間で自動的に削除する設定、視聴前の認証要求。これらは個人の端末に散在するファイルでは実現できません。
大事なのはどちらが優れているかではなく、会議の性質に応じて選べる状態にしておくことです。
社内説明に使えるチェックリスト
情シスや上長への説明で確認を求められるのは、おおむね次の項目です。
| 確認項目 | 何を見るか | 確認先 |
|---|---|---|
| 保存先 | どの事業者のどのサービスに置かれるか | 利用規約、管理コンソール |
| アクセス権 | 誰が閲覧・ダウンロードできるか、誰が権限を管理するか | 管理コンソール |
| 保持期間 | いつまで残るか、自動削除の設定が可能か | 管理コンソールの設定項目 |
| AI処理 | 音声が外部へ送られるか、学習に利用されるか | プライバシーポリシー、問い合わせ |
| 引き継ぎ | 退職・異動時にデータがどうなるか | 運用ルールとして自社で決める |
すべてを完璧に埋める必要はありません。自社で扱う会議のうち最も機密性の高いものを基準に、必要な範囲で確認すれば十分です。
まとめ|先に決めるのは「どの会議をどこに置くか」
- Zoomはローカルまたは自社のZoomクラウド、Meetは主催者のマイドライブ、TeamsはOneDriveまたはSharePoint。保存先はツールごとに固定される
- 個人のドライブ配下に入る構成は、主催者の異動・退職時とストレージ上限で問題になりやすい
- 録画ファイルとは別に、AI議事録に渡した音声の行き先を確認する。学習利用のオプトアウトが明文化されているかが要点
- 会議を機密度で3段階に分け、高機密のものはローカルに留められる構成にしておく
- クラウドが危険という話ではない。管理者による統制が効くのはクラウドの強み
ツールを選ぶ前に「どの会議をどこに置くか」を決めておくと、社内の議論は驚くほど早く進みます。まずは自社の会議を3段階に分けてみるところからどうぞ。
よくある質問
言い切れません。端末の紛失や盗難、退職時の持ち出しといったリスクは、ローカル保存のほうがむしろ管理しにくい面があります。ローカル保存が向いているのは、機密度が高く、閲覧者が限定され、端末の管理体制が整っている場合です。
業種と扱う情報によります。個人情報を含む場合は越境移転の観点が関わりますし、業界のガイドラインで国内保存が求められることもあります。自社の規程を先に確認し、必要ならサービス提供元にデータの保存リージョンを問い合わせてください。
ツールによります。会議ツール内蔵の録画機能は、そもそもクラウド録画が有料ライセンス限定というケースが一般的です。端末側で録るアプリの場合は、無料の範囲がローカル保存で、クラウド保存が有料という構成が多く見られます。
用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ローカル保存 | 録画データを自分のPC内に保存する方式。外部のサーバーを経由しない |
| クラウド保存 | 録画データを事業者のサーバーに保存する方式。どの事業者の領域かで審査の観点が変わる |
| 保持期間 | データを保存しておく期間。一定期間経過後に自動削除する設定を持つサービスもある |
| オプトアウト | 入力データをAIの学習に利用させない設定、またはその申し出のこと |
| アクセス権 | ファイルを閲覧・編集・ダウンロードできる範囲の設定。誰が管理するかも併せて確認する |





