40分の操作解説を録り終えて、書き出す前に通しで確認したら、後半になるほど声が画面より遅れている。編集ソフトで音声トラックを少し前にずらしてみたけれど、冒頭を合わせると終盤が合わない。終盤を合わせると今度は冒頭がずれる。
画面録画の音ズレには性質の異なる2種類があり、原因も対処も別物です。この記事では、まず自分のズレがどちらなのかを30秒で判定し、すでに録れてしまったファイルをどう救うか、そして次の収録で同じことを起こさないための設定までを順番に見ていきます。
まず切り分け|あなたの音ズレは「固定型」か「ドリフト型」か
音ズレの対処でつまずく人の多くは、この切り分けをせずに直し方を探しています。ここを飛ばすと、いくら調べても自分に当てはまらない情報ばかりに当たります。
30秒でできる判定方法
| 症状 | ズレ方 | 分類 | 原因の所在 |
|---|---|---|---|
| 全編を通してズレ幅が同じ | 最初から一定量遅れている(または進んでいる) | 固定型 | 再生環境、または収録の入口 |
| 冒頭は合っているが後半ほど広がる | 時間に比例して差が開く | ドリフト型 | 収録時のデバイス構成 |
冒頭がぴったり合っているのに終盤で1秒近く遅れているなら、ドリフト型です。編集ソフトで音声を一律にずらしても直らないのは、この型だからです。ズレ幅が時間とともに変化しているものを、一定量の移動で合わせることはできません。
「音がまったく入っていない」場合はこの記事の対象外
固定型の音ズレ|まず再生側を疑う
Bluetoothイヤホンで確認していませんか
遅延の大きさは使っているコーデックによって変わります。ただし低遅延のコーデックは、送信側と受信側の両方が対応していないと効果がありません。Mac側が対応していてもイヤホン側が非対応なら、通常のコーデックにフォールバックします。
それでもずれるなら編集ソフトで補正する
有線でもずれている場合は、録画ファイル側に一定量のオフセットが入っています。固定型であれば、編集ソフトで音声トラックを丸ごと移動させれば合わせられます。ドリフト型と違い、この型は一律の移動で解決します。
ズレ幅は、映像内で音が出る瞬間がはっきり分かる箇所を使うと測りやすくなります。キーボードを叩く音、マウスのクリック音などが目印になります。
ドリフト型の音ズレ|デバイスごとの時計がずれている
ここからが本題です。後半ほど広がるズレは、収録した瞬間から仕込まれています。
なぜ時間とともに広がるのか
この差は1秒あたりで見ればわずかなものです。しかし録画が長くなるほど蓄積します。動画配信の現場では、フレームレートが混在した素材で30分あたり約1秒程度ずれた事例が報告されています。40分の録画で終盤だけ違和感が出るのは、この蓄積によるものです。
Macで起きやすい3つの構成
Macの画面録画でドリフト型が発生しやすいのは、次のような構成になっているときです。
macOSは仕様上、システム音声(PC内部の音)をそのままでは録音できません。そのため BlackHole のような仮想オーディオドライバを入れて、音の通り道を作る方法が広く使われています。ただしこの方式は、音声の経路に本来なかった一段を挟むことになります。経路が増えるほど、クロックの基準がずれる余地も増えます。
マイクの音とシステム音声を同時に録るために、複数のデバイスを1つにまとめる「集約デバイス」を組んでいる場合。ここは特にドリフトが出やすい構成です。異なる機器の時計を無理やり束ねているためです。
音声を1秒間に何回記録するかを示す値がサンプルレートです。44.1kHzと48kHzが混在していると、変換処理が挟まってズレの原因になります。
確認手順(オーディオMIDI設定)
Macの「オーディオMIDI設定」を開いて確認します。アプリケーションフォルダ内の「ユーティリティ」にあります。
- 左側のデバイス一覧から、録音に使っているデバイスを選ぶ
- フォーマット欄のサンプルレートを確認し、関係する機器をすべて48kHzに揃える
- 集約デバイスを使っている場合は、それを選んで内容を確認する
- 集約デバイス内で主装置(クロックの基準にするデバイス)を1つ決める
- 主装置以外のデバイスの「ドリフト補正」にチェックを入れる
4と5が抜けていると、束ねた機器がそれぞれの時計で動き続けることになります。ここが未設定のままドリフトに悩んでいるケースは珍しくありません。
すでに録れてしまったファイルを救う
撮り直せない録画の場合の話です。
ドリフト型は「伸縮」で合わせる
補正率の考え方はこうです。終盤でのズレ秒数を、動画全体の秒数で割ります。40分(2400秒)の動画で終盤に1秒遅れているなら、1 ÷ 2400 で約0.04%。音声クリップの速度をこの分だけ変えれば、理屈のうえでは全編が揃います。
多くの編集ソフトには、音の高さを保ったまま速度を変える機能があります。0.04%程度の変化であれば、聞いて分かるほどの違いにはなりません。
正直に書いておくと、完全には戻らないことがあります
納品物や公開予定の動画で、確認して違和感が残るようなら、撮り直しを選ぶほうが結果的に早いこともあります。ここは正直にお伝えしておきます。
次からズレない構成で録る
ドリフト型は、事後の補正より収録段階の見直しのほうが確実です。原因が構成そのものにあるためです。
収録経路をできるだけ短くする
仮想オーディオドライバを入れ、集約デバイスで束ね、そこから録画アプリに渡す。この構成は、音が届くまでに複数の機器と設定を経由します。経由する箇所が増えるほど、クロックの基準がばらつく余地も増えていきます。
Qurecoは仮想オーディオの設定なしでシステム音声を録れる設計です。マイクとシステム音声のオンオフをアプリ内で切り替えられるので、集約デバイスを組む必要がありません。録画は無料で、時間制限もウォーターマークもありません。
一点だけお伝えしておくと、これは「音ズレが起きなくなる」という話ではありません。収録経路が短くなることで、ドリフトの原因のひとつが構成から消える、という範囲の話です。
CPU負荷を下げる
収録中にMacの処理が追いつかないと、フレーム落ちが起きます。映像側のコマが欠けると、音声との対応関係が崩れます。
録画アプリ側で解像度を選べる場合は、1080pや720pに落とすだけでも負荷はかなり変わります。
収録中だけは有線に切り替える
Bluetoothイヤホンを使っていると、収録中のモニタリングでも遅延します。録りながら「なんとなくずれている気がする」と感じても、それが実際のファイルのズレなのか再生の遅延なのか判断できません。
収録のときだけ有線に差し替える。地味ですが、判断を狂わせる要素をひとつ減らせます。
まとめ|ズレ方を見れば、やることは決まる
- 全編で同じだけずれている(固定型): まずBluetoothを疑い、有線で再生し直す。ファイル側なら編集ソフトで一律に移動させれば合う
- 後半ほど広がる(ドリフト型): 収録時のデバイス構成が原因。オーディオMIDI設定でサンプルレートを48kHzに揃え、集約デバイスの主装置とドリフト補正を設定する
- すでに録れたファイル: ドリフト型は音声の伸縮で合わせる。補正率は「終盤のズレ秒数 ÷ 全体秒数」
- 次回以降: 仮想オーディオと集約デバイスを重ねない構成にして、収録経路を短くするのが最も確実
音ズレは、起きてから直すより起きない構成で録るほうが早く終わります。まずは自分のズレがどちらの型かを判定するところから始めてみてください。
よくある質問
起きます。QuickTime Player自体の問題というより、システム音声を録るために仮想オーディオドライバを設定している場合、その構成がドリフトの原因になります。マイクのみの収録であれば発生しにくくなります。
ドリフト型については、直りません。原因が収録済みファイルの中にあるためです。ただし音声の速度をごく細かく調整できるソフトであれば、補正の作業はしやすくなります。
マイク単体が原因になることは多くありません。問題になりやすいのは、外付けマイクとシステム音声を集約デバイスで束ねている場合です。この構成なら、主装置とドリフト補正の設定を確認してください。
書き出し時のフレームレート設定が、収録時と異なっている可能性があります。特に収録が可変フレームレートで、書き出しが固定フレームレートの場合に起きやすい症状です。書き出し設定を収録時に合わせてみてください。
用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ドリフト | 複数の機器の内部クロックにわずかな速度差があるために、時間の経過とともに音と映像の差が広がっていく現象 |
| サンプルレート | 音声を1秒間に何回記録するかを示す値。44.1kHzや48kHzが一般的で、機器間で揃っていないと変換処理が挟まる |
| 集約デバイス | macOSの機能で、複数の音声入出力デバイスを1つのデバイスとしてまとめたもの。主装置の指定とドリフト補正の設定が必要 |
| 仮想オーディオデバイス | 実際の機器ではなく、ソフトウェア上で音の通り道を作るドライバ。BlackHoleなどがあり、macOSでシステム音声を録るために使われる |
| 可変フレームレート | 録画中にフレームレートが一定でなく変動する方式。編集ソフトでの取り扱いによっては音ズレの原因になる |





