情シスの問い合わせ対応を録画して手順書に|同じ質問に3回答えない

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情シスの問い合わせ対応を録画して手順書に|同じ質問に3回答えない

「また同じ質問か」と思った瞬間が、記録を残すタイミングです。

ただし、手順書を書く時間を確保する話ではありません。いま画面共有して説明しているその1回を録って、テキスト3行を添えて置いておく。それだけで次の人は自分で解決できます。

この記事では、何回目で録るかの線引き、情シスの画面で残してはいけないもの、録り方のコツ、そして動画を丸ごと渡さないための渡し方を順に書きます。

(社内からのIT問い合わせに一次対応している情シス担当者に向けた記事です。全社のマニュアル基盤を選定したい方や、顧客向けサポートコンテンツを作りたい方には合いません)

「また同じ質問」は時間の使い方の問題

72.3%が週1回以上、同じ問い合わせを受けている

ソニービズネットワークスが従業員100名以上の中小企業の情シス担当者108名に行った調査(2025年8月27日〜28日実施)で、過去に回答した内容と同様の問い合わせを週1回以上受けている人が72.3%という結果が出ています。1日あたりの問い合わせ件数が30件以上の人が46.2%、問い合わせ対応によって戦略的業務の時間が足りないと感じている人が84.3%でした(ソニービズネットワークス株式会社調べ)。

この3つの数字は、順番に読むと意味がつながります。1日30件を捌きながら、その7割が既出の質問で、結果として本来やるべき仕事の時間がない。

ここで「FAQを整備しましょう」という結論に進む記事は多いのですが、整備する時間がある前提になっています。8割以上が戦略業務の時間すら足りないと答えている相手に、別枠のドキュメント作成工数を求めている形です。

手順書は「書く」から「録る」に変える

発想を変えます。手順書を作る時間をどこかから捻出するのではなく、いま発生している対応そのものを素材にします。

問い合わせに答えるとき、たいてい画面共有をして操作を見せています。その画面はすでに手順書の中身そのものです。録っていないから消えているだけで、作業としては毎回やっています。

録画を回しておけば、説明が終わった時点で素材が1本できています。追加の工数はほぼゼロです。

録るのは3回目だけ|残すもの・残さないものを先に決める

全部録ると、見返せない動画の山ができます。先に線引きをします。

3回ルール

  • 1回目: 普通に答えます。録りません
  • 2回目: 問い合わせ管理のメモに印だけつけます
  • 3回目: 録ります

2回目までは偶然の可能性があります。3回目は構造です。この先も来ると考えて間違いありません。

逆に言えば、3回来ていない質問のために手順書を作る必要はありません。情シスの業務には一度きりの対応が大量にあり、それを全部ドキュメント化しようとするから終わらなくなります。

録らないもの

情シスの画面には、見せてはいけないものが頻繁に映ります。先に決めておきます。

録らない理由
他人のアカウント情報が映る画面管理コンソールには全ユーザーのメールアドレスと所属が並びます
資産管理台帳・ライセンス一覧社内の構成情報がそのまま出ます
一過性の障害対応再現しないものは手順書にならず、誤った手順として残るほうが危険です
個別事情の強い案件役員の端末だけの設定など、他の人がなぞると事故になります
相手の画面そのもの相手のデスクトップ、通知、開いているファイル名が入ります

自分の環境で再現して録る

最後の項目が重要です。問い合わせてきた人の画面をそのまま録らないでください。

対応はそのまま終わらせて、録るのは後です。テスト用のアカウントか自分の環境で同じ手順をなぞり直します。3分の操作なら、再現も3分です。

この一手間で、個人情報も相手の作業内容も映り込まなくなります。社内共有のハードルが一気に下がるので、結果的にこちらのほうが速いです。

問い合わせ対応を録るときの4つのコツ

① ウィンドウ単位で録る

画面全体ではなく、対象のウィンドウだけを選んで録ります。

管理コンソールを開いたまま別のタブに切り替えた瞬間や、Slackの通知がポップアップした瞬間が入りません。情シスの画面では、この事故が起きやすいです。

② 操作の前に「何をするか」を声に出す

操作しながら黙って進めないでください。

「まずシステム設定を開きます。ネットワークのところですね。ここのVPN設定を一度削除します」

この一言ずつが、後からテキスト手順に変換するときの見出しになります。文字起こしやAI要約にかけたとき、何もしゃべっていない動画からは手順が起こせません。

③ 2〜3分で切る

長い動画は見られません。1本1テーマにして、2〜3分を上限にします。

手順が長い場合は分割します。「VPNの再設定」と「証明書の入れ直し」は別の動画にしておくと、次に聞かれたときに該当するほうだけ渡せます。

④ 迷った操作も残す

撮り直したくなりますが、一度で完璧に進む動画より、少し迷っている動画のほうが実用的です。

「あれ、ここ最近変わりましたね。新しいUIだと設定はこっちです」という発言が入っていると、見る側は同じ場所で迷ったときに安心します。編集も撮り直しも不要です。


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動画は丸ごと渡さない|テキスト3行+秒数で渡す

ここを間違えると、録った動画は見られません。

動画マニュアルが見られない理由

動画マニュアルの弱点は、推進する側のベンダーコンテンツでも指摘されています。情報量が多くて流れてしまい、大事な部分を見逃して早送りと巻き戻しを繰り返すこと、そして作成と更新の負荷が大きいことです(動画マニュアルのメリットと課題|スタディスト)。
もっともな指摘です。だから動画を主役にしません。

渡す形

Slackやチャットで返すときは、この形にします。

【VPNが繋がらない(自宅Wi-Fiの場合)】

1. システム設定 > ネットワーク からVPN接続を削除
2. 社内ポータルから最新のプロファイルを再ダウンロード
3. 再インストール後、Macを再起動

操作の動画(2分40秒): https://...
 - プロファイル削除: 0:35
 - 再インストール: 1:20

うまくいかない場合は、証明書の有効期限切れの可能性があります

テキスト3行で済む人はそれで解決します。手が止まる人だけが動画を開きます。しかも秒数が書いてあるので、頭から見る必要がありません。

早送りと巻き戻しが発生するのは、どこを見ればいいか書いていないからです。 秒数を2つ3つ添えるだけで、この問題は消えます。

更新はしない。撮り直す

管理画面のUIが変わったら、動画を編集して直そうとしないでください。2〜3分の動画なら、撮り直すほうが速いです。

編集を前提にすると、更新が後回しになって古い手順が残ります。これが動画マニュアルが廃れる一番の原因です。録り直す前提にしておけば、更新負荷の問題はそもそも発生しません。

貯める場所は1か所に決める

動画とテキストがチャットの履歴に埋もれると、結局探せません。置き場所を1か所に決めます。

「症状」で引ける形で置く

情シスのナレッジを「カテゴリ」で整理しても引けません。問い合わせてくる人は機能名を知らないからです。

Notionのデータベースなら、こういう列で足ります。

症状(タイトル)対象更新日動画
VPNが繋がらない(自宅Wi-Fi)全社2026-10-10リンク
プリンタが出てこない(4F)4F2026-09-22リンク
Teamsの通知が来ない全社2026-10-01リンク
タイトルは問い合わせてきた人の言葉そのままにします。「VPNプロファイルの再インストール手順」ではなく「VPNが繋がらない」です。検索するのは情シスではなく、困っている本人だからです。
Notionでの議事録・ナレッジのDB設計はNotionで議事録を管理する方法に詳しくまとめています。共有のしかたは議事録の共有方法も参考になります。

テキスト手順の下書きは録画から作る

テキスト3行を書くのも面倒、という場合は、録画からAIに起こさせる手が使えます。操作中に「何をするか」を声に出しておけば、その音声から手順の下書きが出ます。

出てきた下書きをそのまま貼るのではなく、3行に削ってから渡してください。AIが出す手順は丁寧すぎて長くなりがちです。

この運用が向く問い合わせ・向かない問い合わせ

向く向かない
画面操作が3ステップ以上ある「どのボタンですか」で終わる質問
言葉で説明しづらい場所をクリックする文章1行で済む設定値の案内
複数の画面を行き来する権限付与など、情シス側でやったほうが速いもの
年に数回しか発生せず、担当者も手順を忘れる障害対応など毎回状況が違うもの
4つ目は意外と効きます。年1回の作業は、本人も忘れています。 来年の自分に向けて録っておくと、属人化の解消にそのまま効きます。

問い合わせ録画に向く道具の条件

毎日のように録るので、道具の条件が効いてきます。

条件なぜ効くか
ウィンドウ単位で録れる管理コンソールや通知の映り込みを防げます
録画時間の制限がない無料アプリは5分や30分で切れるものがあります
ウォーターマークが入らない社内資料に透かしが乗ると、画面の文字が読めなくなることがあります
解像度を選べる手順書用途なら720pで足ります。本数が増えても容量を抑えられます
録ったものが一覧で管理できる1本ずつファイル名を付けて保存していくと、半年で破綻します
QurecoはMac用の画面録画アプリで、上の条件を無料の範囲で満たします。
  • 画面全体またはウィンドウ単位を、サムネイル付きで選んで録れます
  • 録画時間は無制限、ウォーターマークなし。MP4 / MP3で書き出せます
  • 解像度は1080p / 720p / 480p / 360p から選べます
  • 録画ライブラリで一覧・再生・タイトル編集ができます
Qurecoの録画画面。録画するウィンドウを選び、マイクとシステム音声を個別にオンオフできる
Qureco公式サイト

Proプランでは録画をクラウドに自動保存でき、録画からAIが議事録を生成します。操作中の説明を手順の下書きに変換する使い方ができ、Notionへの連携もそのまま行えます。

一つだけ注意点です。Qurecoに動画の編集機能はありません。 モザイク処理や不要部分のカットが必要な用途には向きません。この記事の運用は「自分の環境で再現して録る」「編集せず撮り直す」が前提なので問題になりませんが、映り込みを後から隠す運用を考えている場合は別のツールが要ります。macOS専用である点も先に書いておきます。

よくある質問

問い合わせてきた人に、録画していいか聞くべきですか
この記事の運用では聞く必要がありません。相手の画面も声も録らないからです。 対応を終えてから、自分の環境で手順をなぞり直して録ります。相手の画面を録る必要がある場合(再現手順を記録したいときなど)は、事前に伝えてください。不具合の再現手順は、文章より録画で渡すに、依頼する側の録り方をまとめています。
再現して録り直す時間が取れません
3回目だけに絞れば、週に1本か2本です。1本3分なら、週10分以内に収まります。それでも厳しい場合は、その3分を払うと次回以降の15分が消えるという計算で判断してください。1日30件のうち7割が既出という状況なら、回収は早いです。
動画を置いても見てもらえません

動画を主役にしているとそうなります。テキスト3行を先に出して、動画は補足として下に置いてください。順番が逆だと開かれません。

マニュアル作成ツールを入れたほうがいいのでは
全社でマニュアルを整備するフェーズに入っているなら、専用ツールのほうが向いています。画像の自動分割、編集、権限管理、更新管理まで揃っています。この記事の運用は、その前段で、今の業務を止めずに素材を貯めるためのものです。貯まってから整備に進めば、ゼロから書き起こす必要がなくなります。
AIチャットボットを入れるほうが早いのでは
同じ調査で、8割以上がAIチャットボットの導入に前向きという結果も出ています。ただしチャットボットは読ませる元のドキュメントがあって初めて回答できます。そのドキュメントを用意する部分は残るので、録画で素材を貯める運用とは競合しません。むしろ先に素材があるほうが導入は進みます。
セキュリティ的に録画データを置いていいか迷います
社外秘が映っていない前提でも、置き場所の方針は先に決めてください。クラウドに置くか社内に置くか、共有範囲をどこまでにするかの2点です。会議の録画データはどこに保存される?に保存先ごとの整理があります。

まとめ

  • 情シスの72.3%が同じ問い合わせを週1回以上受けている。手順書を書く時間を捻出する発想では回らない
  • 3回目の問い合わせだけ録る。1回目は答える、2回目は印をつける、3回目で録画する
  • 相手の画面は録らない。対応後に自分の環境で再現して録れば、個人情報も相手の作業内容も映らない
  • 録り方のコツは4つ。ウィンドウ単位で録る、操作前に何をするか声に出す、2〜3分で切る、迷った操作も残す
  • 動画は丸ごと渡さない。テキスト3行を先に出し、動画は秒数を添えて下に置く
  • 更新するのではなく撮り直す。2〜3分なら編集するより速い
  • 置き場所は1か所に決め、タイトルは問い合わせてきた人の言葉そのままにする

次に「また同じ質問か」と思ったとき、その対応を手帳にメモするのではなく、3分だけ使って録ってみてください。1本目ができると、2本目からは流れで貯まっていきます。

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この記事を書いた人

井上 峻輔

井上 峻輔

Qurio株式会社 代表取締役

AIコンサルティング会社Qurioの創設者。上智大学にてAIを専攻し、AI研究サークル「SOMA」を設立。その後、株式会社JPMTの代表として「みんプロ」(ユーザー数1,300人突破)や業務分析SaaS「Optpath」の開発を手掛ける。2025年10月にQurio株式会社を設立し、AI・データ領域の開発・コンサルティングを展開。日経フォーラム「第30回 アジアの未来」に登壇。『テクノロジーの発展を促進する』ことを信条に、AIを活用した新たな価値創出に取り組んでいる。