「また同じ質問か」と思った瞬間が、記録を残すタイミングです。
ただし、手順書を書く時間を確保する話ではありません。いま画面共有して説明しているその1回を録って、テキスト3行を添えて置いておく。それだけで次の人は自分で解決できます。
この記事では、何回目で録るかの線引き、情シスの画面で残してはいけないもの、録り方のコツ、そして動画を丸ごと渡さないための渡し方を順に書きます。
(社内からのIT問い合わせに一次対応している情シス担当者に向けた記事です。全社のマニュアル基盤を選定したい方や、顧客向けサポートコンテンツを作りたい方には合いません)
「また同じ質問」は時間の使い方の問題
72.3%が週1回以上、同じ問い合わせを受けている
この3つの数字は、順番に読むと意味がつながります。1日30件を捌きながら、その7割が既出の質問で、結果として本来やるべき仕事の時間がない。
ここで「FAQを整備しましょう」という結論に進む記事は多いのですが、整備する時間がある前提になっています。8割以上が戦略業務の時間すら足りないと答えている相手に、別枠のドキュメント作成工数を求めている形です。
手順書は「書く」から「録る」に変える
問い合わせに答えるとき、たいてい画面共有をして操作を見せています。その画面はすでに手順書の中身そのものです。録っていないから消えているだけで、作業としては毎回やっています。
録画を回しておけば、説明が終わった時点で素材が1本できています。追加の工数はほぼゼロです。
録るのは3回目だけ|残すもの・残さないものを先に決める
全部録ると、見返せない動画の山ができます。先に線引きをします。
3回ルール
- 1回目: 普通に答えます。録りません
- 2回目: 問い合わせ管理のメモに印だけつけます
- 3回目: 録ります
2回目までは偶然の可能性があります。3回目は構造です。この先も来ると考えて間違いありません。
録らないもの
情シスの画面には、見せてはいけないものが頻繁に映ります。先に決めておきます。
| 録らない | 理由 |
|---|---|
| 他人のアカウント情報が映る画面 | 管理コンソールには全ユーザーのメールアドレスと所属が並びます |
| 資産管理台帳・ライセンス一覧 | 社内の構成情報がそのまま出ます |
| 一過性の障害対応 | 再現しないものは手順書にならず、誤った手順として残るほうが危険です |
| 個別事情の強い案件 | 役員の端末だけの設定など、他の人がなぞると事故になります |
| 相手の画面そのもの | 相手のデスクトップ、通知、開いているファイル名が入ります |
自分の環境で再現して録る
対応はそのまま終わらせて、録るのは後です。テスト用のアカウントか自分の環境で同じ手順をなぞり直します。3分の操作なら、再現も3分です。
この一手間で、個人情報も相手の作業内容も映り込まなくなります。社内共有のハードルが一気に下がるので、結果的にこちらのほうが速いです。
問い合わせ対応を録るときの4つのコツ
① ウィンドウ単位で録る
画面全体ではなく、対象のウィンドウだけを選んで録ります。
管理コンソールを開いたまま別のタブに切り替えた瞬間や、Slackの通知がポップアップした瞬間が入りません。情シスの画面では、この事故が起きやすいです。
② 操作の前に「何をするか」を声に出す
操作しながら黙って進めないでください。
「まずシステム設定を開きます。ネットワークのところですね。ここのVPN設定を一度削除します」
③ 2〜3分で切る
長い動画は見られません。1本1テーマにして、2〜3分を上限にします。
手順が長い場合は分割します。「VPNの再設定」と「証明書の入れ直し」は別の動画にしておくと、次に聞かれたときに該当するほうだけ渡せます。
④ 迷った操作も残す
「あれ、ここ最近変わりましたね。新しいUIだと設定はこっちです」という発言が入っていると、見る側は同じ場所で迷ったときに安心します。編集も撮り直しも不要です。
問い合わせ対応の録画に QurecoMac用の録画アプリで、ウィンドウ単位の録画・時間無制限・ウォーターマークなしを無料の範囲で満たします。仮想オーディオの設定なしで、画面と音声をそのまま残せます。
動画は丸ごと渡さない|テキスト3行+秒数で渡す
ここを間違えると、録った動画は見られません。
動画マニュアルが見られない理由
渡す形
Slackやチャットで返すときは、この形にします。
【VPNが繋がらない(自宅Wi-Fiの場合)】
1. システム設定 > ネットワーク からVPN接続を削除
2. 社内ポータルから最新のプロファイルを再ダウンロード
3. 再インストール後、Macを再起動
操作の動画(2分40秒): https://...
- プロファイル削除: 0:35
- 再インストール: 1:20
うまくいかない場合は、証明書の有効期限切れの可能性があります
テキスト3行で済む人はそれで解決します。手が止まる人だけが動画を開きます。しかも秒数が書いてあるので、頭から見る必要がありません。
更新はしない。撮り直す
編集を前提にすると、更新が後回しになって古い手順が残ります。これが動画マニュアルが廃れる一番の原因です。録り直す前提にしておけば、更新負荷の問題はそもそも発生しません。
貯める場所は1か所に決める
動画とテキストがチャットの履歴に埋もれると、結局探せません。置き場所を1か所に決めます。
「症状」で引ける形で置く
情シスのナレッジを「カテゴリ」で整理しても引けません。問い合わせてくる人は機能名を知らないからです。
Notionのデータベースなら、こういう列で足ります。
| 症状(タイトル) | 対象 | 更新日 | 動画 |
|---|---|---|---|
| VPNが繋がらない(自宅Wi-Fi) | 全社 | 2026-10-10 | リンク |
| プリンタが出てこない(4F) | 4F | 2026-09-22 | リンク |
| Teamsの通知が来ない | 全社 | 2026-10-01 | リンク |
テキスト手順の下書きは録画から作る
テキスト3行を書くのも面倒、という場合は、録画からAIに起こさせる手が使えます。操作中に「何をするか」を声に出しておけば、その音声から手順の下書きが出ます。
出てきた下書きをそのまま貼るのではなく、3行に削ってから渡してください。AIが出す手順は丁寧すぎて長くなりがちです。
この運用が向く問い合わせ・向かない問い合わせ
| 向く | 向かない |
|---|---|
| 画面操作が3ステップ以上ある | 「どのボタンですか」で終わる質問 |
| 言葉で説明しづらい場所をクリックする | 文章1行で済む設定値の案内 |
| 複数の画面を行き来する | 権限付与など、情シス側でやったほうが速いもの |
| 年に数回しか発生せず、担当者も手順を忘れる | 障害対応など毎回状況が違うもの |
問い合わせ録画に向く道具の条件
毎日のように録るので、道具の条件が効いてきます。
| 条件 | なぜ効くか |
|---|---|
| ウィンドウ単位で録れる | 管理コンソールや通知の映り込みを防げます |
| 録画時間の制限がない | 無料アプリは5分や30分で切れるものがあります |
| ウォーターマークが入らない | 社内資料に透かしが乗ると、画面の文字が読めなくなることがあります |
| 解像度を選べる | 手順書用途なら720pで足ります。本数が増えても容量を抑えられます |
| 録ったものが一覧で管理できる | 1本ずつファイル名を付けて保存していくと、半年で破綻します |
- 画面全体またはウィンドウ単位を、サムネイル付きで選んで録れます
- 録画時間は無制限、ウォーターマークなし。MP4 / MP3で書き出せます
- 解像度は1080p / 720p / 480p / 360p から選べます
- 録画ライブラリで一覧・再生・タイトル編集ができます
Proプランでは録画をクラウドに自動保存でき、録画からAIが議事録を生成します。操作中の説明を手順の下書きに変換する使い方ができ、Notionへの連携もそのまま行えます。
よくある質問
動画を主役にしているとそうなります。テキスト3行を先に出して、動画は補足として下に置いてください。順番が逆だと開かれません。
まとめ
- 情シスの72.3%が同じ問い合わせを週1回以上受けている。手順書を書く時間を捻出する発想では回らない
- 3回目の問い合わせだけ録る。1回目は答える、2回目は印をつける、3回目で録画する
- 相手の画面は録らない。対応後に自分の環境で再現して録れば、個人情報も相手の作業内容も映らない
- 録り方のコツは4つ。ウィンドウ単位で録る、操作前に何をするか声に出す、2〜3分で切る、迷った操作も残す
- 動画は丸ごと渡さない。テキスト3行を先に出し、動画は秒数を添えて下に置く
- 更新するのではなく撮り直す。2〜3分なら編集するより速い
- 置き場所は1か所に決め、タイトルは問い合わせてきた人の言葉そのままにする
次に「また同じ質問か」と思ったとき、その対応を手帳にメモするのではなく、3分だけ使って録ってみてください。1本目ができると、2本目からは流れで貯まっていきます。





