不具合の再現手順は、文章より録画で渡す|バグ報告のスクリーン録画のコツ

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不具合の再現手順は、文章より録画で渡す|バグ報告のスクリーン録画のコツ

「再現しません」

手順は書いたのに、そう返ってきた。もう一度確認して、条件を足して送り直す。今度は「こちらでは正常に動作します」。やり取りは3往復目に入っています。

この往復は、文章の限界から来ています。自分が見ている画面をそのまま相手に見せられれば、1回で終わる話です。この記事では、バグ報告用の録画をどう撮るか、何を映すか、そして録画に添える3行をまとめます。編集はしません。撮って送るだけの型です。

文章の再現手順が伝わらない理由

操作の粒度が人によって違う

再現手順とは、バグを発生させるためにおこなうべき操作を順を追って記載したもので、どの画面で・どんな文字を入力し・どのボタンを押すかまで具体的に書くものだと定義されています(バグ報告書の書き方決定版|モンテカンポ)。

問題は、この「具体的に」の水準が人によって違うことです。

自分では十分に書いたつもりの「商品を検索して詳細を開く」が、相手には「どの検索窓から、どのキーワードで、何件目の結果を開くのか」という3つの分岐に見えています。どれかを違う順番でやると再現しません。

前提の状態が抜ける

手順に書かれるのは操作だけで、操作を始める前の状態は抜けがちです。
  • どの権限のユーザーでログインしているか
  • カートに商品が入っているか、空か
  • 前の画面から遷移してきたのか、URLを直接開いたのか
  • ブラウザのウィンドウ幅

不具合の原因がこの前提側にあると、操作を正しく再現しても現象は出ません。

「何か表示がおかしい」問題

「何か表示がおかしい」という書き方では開発者は何が問題なのか把握できず、「〇〇画面で××ボタンをクリックするとレイアウトが崩れ、テキストの一部が画面外にはみ出す」のように具体的に書く必要があると指摘されています(前掲のモンテカンポ)。

ただ、視覚的な崩れを言葉にするのは元々難しい作業です。「はみ出す」と「重なる」と「切れる」の区別を、見ていない人に伝えるのは骨が折れます。ここが録画が最も効く領域です。

録画で渡すと何が変わるか

時間軸がそのまま渡る

動画であれば、バグが発生するまでの操作手順や、特定条件下でのみ発生する現象を時間軸に沿って示せると整理されています(前掲のモンテカンポ)。

「3回連続でクリックしたときだけ起きる」「読み込みが終わる前に押すと起きる」のようなタイミング依存の現象は、文章では書きにくく、録画なら勝手に伝わります。

往復の回数が減る

バグレポートでは最初の報告時点で必要な情報が揃っていることが極めて重要で、揃っていれば原因の特定と対応が速くなると指摘されています(バグ報告のムダを削減し、迅速な原因特定を実現したい|Qiita)。

往復1回にはこちらの確認と相手の確認、両方の時間がかかります。30秒の録画を撮る手間より、往復1回のほうが確実に高くつきます。

ただし録画だけでは足りない

先に書いておきます。録画を貼るだけの報告は、実は扱いにくいです。

動画は検索できず、引用もできません。バグ管理ツールの一覧に並んだとき、タイトルと本文が「動画のとおりです」だけだと後から辿れなくなります。録画とテキストは両方必要です。後半でその型を書きます。


報告のたびに撮るなら Qureco
月に数回ならMacの標準機能で足ります。毎回撮るようになると効いてくるのが、ウォーターマークなし・録画時間の制限なし・ウィンドウ単位で録れるという条件です。顧客に共有する報告書に透かしが入らず、他のアプリの通知を映さずに済みます。記事の後半で道具の条件を詳しく書きますが、先に試したい方はこちらから。

バグ報告の録画、7つのコツ

① 発生する前の状態から撮り始める

最も多い失敗がこれです。現象が出てから録画を始めてしまう。

崩れた画面だけが映っていると、そこに至る操作が分かりません。録画は「ログイン直後」や「対象の画面を開く前」から始めてください。長くなりすぎるなら、直前の1操作前からで構いません。

② 操作は普段よりゆっくり

自分の手はマウスの動きを覚えていますが、見る側は初見です。

クリックの前に一瞬止まる、入力してから1秒待つ。これだけで、どこを押したのかが分かる映像になります。倍速で撮ったような映像は、結局もう一度質問を呼びます。

③ 対象のウィンドウだけを映す(URLと時刻は入れる)

画面全体を録ると、他のアプリの通知やタブが映り込みます。対象のウィンドウ単位で録るのが基本です。

ただし、ブラウザのアドレスバーは映してください。どのURLで起きたかは必須の情報です。時刻も入っていると、サーバー側のログと突き合わせられます。時計が映る位置にウィンドウを置くか、報告のテキストに時刻を書いてください。

④ Webならコンソールとネットワークを開いて映す

開発者ツールを開いた状態で録るだけで、報告の質が変わります。

  • Consoleタブ: エラーが出ているかどうかが一目で分かる
  • Networkタブ: どのリクエストが失敗しているか、ステータスコードが見える
エラーログやHARファイルの添付といった高度な情報を提供すると開発者の理解が深まり、解決が速くなると整理されています(QAをスマートにする7ステップのバグ追跡テンプレート|ONES)。コンソールを映しておけば、その一部を録画だけで渡せます。

⑤ 音声で「何を期待していたか」を実況する

録画中に一言喋るだけで、映像の意味が確定します。

「ここで保存を押すと、一覧に戻る想定です。……戻らずに、同じ画面のままになりました」

映像は「何が起きたか」を伝えますが、「何が起きるべきだったか」は伝えません。そこを音声で埋めます。マイクの音が入らない場合は、Macの画面録画でマイクの音が入らない原因と対処法を確認してください。

⑥ 尺は30秒から1分に切る

長い録画は見てもらえません。5分の動画を渡すと、相手は再生を後回しにします。

1つの現象につき1本、30秒から1分。手順が長い場合は、前提の準備部分はテキストで書いて、現象が出る直前からの30秒を撮ってください。

⑦ 映してはいけないものを先に閉じる

業務画面を録るときに必ず起きる問題です。撮る前に確認してください。

  • 顧客名・個人情報が入った一覧やメールの通知
  • 他社の案件名が見えるチャットやカレンダー
  • 検証環境ではなく本番環境のデータ
  • ブックマークバーに並ぶ社内システムのURL
可能なら検証環境とテストデータで再現してから撮るのが安全です。本番でしか出ない現象なら、対象のウィンドウだけを映し、送る前に自分で一度再生して確認してください。

録画に添える3行

録画とセットで、テキストは必ず書きます。長くする必要はありません。3行で足ります。

【期待】保存ボタンを押すと商品一覧に戻る
【実際】画面が変わらず、Consoleに 500 エラーが出る(動画 0:12)
【環境】macOS 15.6 / Chrome 141 / 管理者アカウント / 本番環境 / 9月11日 10:42

ポイントは3つです。

  • 期待と実際を並べる。これは文章で書くべきものです。録画は「実際」しか映しません
  • 動画の秒数を書く。0:12 と書いてあれば、相手は12秒から見ます
  • 環境を1行にまとめる。OS、ブラウザ、権限、環境、時刻。ここが抜けると必ず質問が返ってきます

この3行があると、バグ管理ツールの一覧でも検索に引っかかります。動画だけの報告が抱える「後から辿れない」問題を解決できます。

「再現しません」と返ってきたら

録画を添えても、相手の環境では出ないことがあります。ここからが本番です。

再現しない不具合は情報の残し方で勝負が決まるとされ、条件の当たりを付ける、仕様の可能性も逃さない、回避策があれば共有する、の3点が挙げられています(QA3年目の僕が1年目の自分に伝えたい不具合報告のマインド|Qiita)。

条件を1つだけ変えて2本目を撮る

やってはいけないのは、同じ操作をもう一度撮って送ることです。同じ映像が2本になるだけです。

変える条件は1回に1つだけにします。

  • 別のブラウザで撮る
  • 別の権限のユーザーで撮る
  • ウィンドウ幅を狭くして撮る
  • 通信を遅くして(開発者ツールのスロットリング)撮る
出た条件と出なかった条件の両方を報告すると、それが原因の切り分けになります。「Chromeでは出る、Safariでは出ない」は、それ自体が有力な情報です。

仕様の可能性を残す

自分が不具合だと思った現象が、仕様どおりの動作である可能性は常にあります。

報告のテキストに「仕様であればクローズしてください」と一言添えておくと、相手も指摘しやすくなります。往復を減らすのはこういう一言です。

回避策があれば書く

「一度リロードすれば正常に戻る」といった回避策が分かっているなら、必ず書いてください。優先度の判断がその場でできます。

毎日撮るなら道具の条件

先に書いておくと、Macの標準機能(Command + Shift + 5)で足りる場面は多いです。月に数回しか撮らないなら、標準機能で十分です。

条件が変わるのは、報告のたびに撮るようになったときです。次の4点が実務に効いてきます。

条件なぜ効くか
ウォーターマークが入らない顧客に共有する報告書に透かしが入ると使えない
録画時間の制限がない準備に手間取ると無料アプリの制限(5分・30分)に当たる
ウィンドウ単位で録れる他のアプリの通知や情報を映さずに済む
解像度を選べる720pにすればファイルが軽く、チャットにそのまま貼れる
QurecoはMac用の録画アプリで、この4点を無料の範囲で満たします。
  • 画面全体またはアプリのウィンドウ単位を選んで録れます。サムネイル付きで選ぶので、間違って別の画面を録る事故が起きません
  • 解像度を1080p / 720p / 480p / 360p から選べるので、報告用なら720pでファイルを軽くできます
  • マイクとシステム音声を個別にON/OFFできます。実況の声だけ入れて、システム音は切るという設定ができます
  • 録画時間は無制限、ウォーターマークなし。MP4で書き出せます
  • 仮想オーディオの設定は不要です
Qurecoの録画画面。録画するウィンドウを選び、マイクとシステム音声を個別にON/OFFできる
Qureco公式サイト
一つだけ注意点です。Qurecoに動画の編集機能はありません。特定の箇所を切り出したり、モザイクをかけたりする作業は別のツールが必要です。この記事の型は「編集せずに30秒で撮る」前提なので問題になりませんが、映ってはいけないものを後から隠す用途には向きません。撮る前に閉じてください。
無料アプリの時間制限を横並びで確認したい場合は【Mac】無料の画面録画アプリ、時間制限まとめ、透かしの有無で選びたい場合はMacで透かしなしの画面録画ができる無料アプリ5選、解像度とフレームレートの決め方は画面録画の解像度・フレームレート完全ガイドにまとめています。

よくある質問

動画は見るのに時間がかかると言われました

尺と添えるテキストで解決します。30秒に切り、3行の説明に「動画 0:12」のように秒数を書いてください。相手は該当箇所から再生します。5分の動画を「見てください」と渡すのが嫌われるだけで、動画そのものが嫌われているわけではありません。

ファイルが重くて送れません

解像度を下げるのが最も効きます。報告用の録画は720pで十分読めます。それでも大きい場合は尺を切ってください。30秒の720p動画なら、チャットにそのまま貼れるサイズに収まります。

顧客環境で起きた不具合はどう撮ればいいですか

顧客に撮ってもらう場合は、標準機能の手順(MacならCommand + Shift + 5、WindowsならWin + Alt + R)を案内するのが確実です。追加のアプリを入れてもらう依頼は通りにくいためです。その際も「発生する前から撮ってください」「アドレスバーを映してください」の2点だけ伝えると、使える録画が返ってきます。

スクリーンショットで足りる場面はありますか
あります。表示の崩れ、誤字、金額の表示違いのように静止した状態で説明できる現象はスクリーンショットのほうが速いです。録画が要るのは、操作の順番やタイミングが関係する現象です。
音声は必要ですか

必須ではありませんが、あると往復が減ります。声を入れられない環境なら、代わりに録画の前に対象を一度クリックして選択状態にするなど、視線を誘導する工夫をしてください。期待していた動作はテキストの【期待】行で必ず補います。

まとめ

  • 文章の再現手順が伝わらないのは、操作の粒度と前提の状態が人によって違うから
  • 録画は時間軸をそのまま渡せる。タイミング依存の現象や表示の崩れは、言葉より速い
  • 撮り方の型は7つ。発生前から撮る・ゆっくり操作する・ウィンドウ単位で撮る・コンソールを映す・実況する・30秒に切る・映してはいけないものを先に閉じる
  • 録画だけでは足りない。期待・実際・環境の3行を必ず添える。動画の秒数も書く
  • 「再現しません」と返ってきたら、条件を1つだけ変えて2本目を撮る。出た条件と出なかった条件の両方が情報になる

次に不具合を報告するとき、現象が出る前から30秒だけ撮ってみてください。往復が1回で止まれば、それが撮影にかかった30秒の元は取れています。

Qureco

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この記事を書いた人

井上 峻輔

井上 峻輔

Qurio株式会社 代表取締役

AIコンサルティング会社Qurioの創設者。上智大学にてAIを専攻し、AI研究サークル「SOMA」を設立。その後、株式会社JPMTの代表として「みんプロ」(ユーザー数1,300人突破)や業務分析SaaS「Optpath」の開発を手掛ける。2025年10月にQurio株式会社を設立し、AI・データ領域の開発・コンサルティングを展開。日経フォーラム「第30回 アジアの未来」に登壇。『テクノロジーの発展を促進する』ことを信条に、AIを活用した新たな価値創出に取り組んでいる。