デザインの修正指示を具体化する3つの質問|レビューの録り方と決定リストの作り方

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デザインの修正指示を具体化する3つの質問|レビューの録り方と決定リストの作り方

レビューで「なんか違うんだよね」と言われたとき、その場で聞くべきことは3つだけです。

  1. どこの話ですか
  2. どうなっていれば正解に近いですか
  3. これは決定ですか、意見ですか

この3つを聞いてから帰れば、解釈して直して「そういうことじゃない」と戻される往復が消えます。逆にここを聞けないまま持ち帰ると、どれだけ丁寧にメモを取っても精度は上がりません。デザイナー・ディレクター464名の調査では、修正指示を面倒に感じた経験がある人が84.9%。メモの取り方を工夫して解決する話ではない、ということです。

この記事では、3つの質問の具体的な聞き方、質問に集中するためのレビュー録画の撮り方、終わった後に10分で出す決定リストの形を順に書きます。

(UI・ビジュアルのデザインレビューを受ける側に向けた記事です。製造業の設計審査を探している方には合いません)

「なんか違う」をその場で具体化する3つの質問

多くの記事は「発注者は具体的に伝えましょう」と書きます。正論ですが、実務では通りにくい。発注者は言語化のプロではないからこそ「なんか違う」になるので、語彙を求めても出てきません。
代わりに、受け手側が質問で具体化を引き出します。コツは、相手に語彙を要求せず、選ばせる形にすることです。

質問1: 「どこの話ですか」

範囲を確定させます。

「重いというのは、このCTAのブロックですか。それとも上から下まで全体の印象ですか」

二択か三択で聞きます。相手はカーソルを動かして示してくれます。これで言葉と対象が結びつきます。

録画していれば、この瞬間のカーソルの動きがそのまま残ります。

質問2: 「どうなっていれば正解に近いですか」

比較対象を引き出します。

「近いと感じるサイトや、前に見た案はありますか」

「信頼感」という語を定義してもらうのは難しいですが、近いものを1つ挙げてもらうのは簡単です。既存の自社サイト、競合、過去に出した別案。何でも構いません。

1つ出てくれば、そこから差分で会話ができます。「あのサイトに近づけるとしたら、余白を広げる方向ですか、文字を減らす方向ですか」というように、次も選択肢の形で聞けます。

質問3: 「これは決定ですか、意見ですか」

これが一番効きます。

「いまのお話は、直す前提で進めていいですか。それとも気になった点の共有でしょうか」

レビューでは、決定と感想と思いつきが同じトーンで出ます。全部を修正指示として受け取ると、作業量が膨らみ、しかも後で「そこまでは言っていない」と言われます。

聞き方としては、相手を責めない形にします。「決めていただかないと困ります」ではなく、「直す前提で進めていいですか」。前に進めるための確認として置けば、角は立ちません。

この3つは、1回のレビューで全部使う必要はありません。「なんか違う」が出たときだけ使います。

レビューを録画するときの4つのコツ

質問に集中するには、記録を手放す必要があります。録画はそのための道具です。

① 画面共有している側のウィンドウを録る

カーソルが映る側を録ってください。

相手が画面共有してコメントしている場合は、そのウィンドウを録ります。自分がデザインを共有していて相手が指示を出している場合は、自分の画面を録ります。指し示す動きが映っていないと、録画の価値が半減します。

画面全体ではなくウィンドウ単位で録ると、他のアプリの通知や別案件の情報が映り込みません。

② 開始時に一言添える

録画していることは先に伝えます。伝え方は目的から入るのが自然です。

「指摘を取りこぼしたくないので、この画面だけ録らせてください。社内の作業用に使って、共有はしません」

目的と、どこまで使うかをセットで言うと、ほぼ引っかかりません。社外が相手の場合は後半のFAQも参照してください。

③ 指摘が出たら「いま何分」を口に出す

後で探すためのしおりです。

「このあたりですね、承知しました」

と受けながら、手元のメモに時刻だけ書いておくか、少し大きめの声で復唱して録音に残します。復唱は録画上の目印になり、かつ相手に「伝わった」という確認を返せます。一石二鳥です。

④ 終了前に決定事項を読み上げる

レビューの最後2分を確保して、決まったことを口頭で読み上げます。

「では直すのは、CTAブロックの余白と、見出しのウェイトの2点。ヘッダーの色は今回は保留、ということで進めます」

その場で認識を揃えられますし、録画の最後に決定のまとめが入るので、後から全部を見返す必要がなくなります。

レビューの録画に Qureco
Mac用の録画アプリで、ウィンドウ単位での録画・録画時間の無制限・ウォーターマークなしを無料の範囲で満たします。仮想オーディオの設定なしに、相手の声も一緒に録れます。

レビュー後に残す決定リスト

ここを飛ばすと、録画は死蔵されます。

録画をそのまま渡してはいけません。 「1時間の録画を置いておくので見ておいてください」は、まず見てもらえません。自分でも見返しません。
録画は根拠として保管し、決定だけをテキストに落とします。レビュー終了から10分以内に出すのが目標です。

形式は5項目で足ります。

【LPデザインレビュー 10/2】

1. CTAブロック周辺
   指摘: 余白が詰まって見える
   決定: 上下の余白を24pxに広げる
   担当: 白井 / 10月6日まで
   録画: 08:40

2. 見出しのウェイト
   指摘: 全体的に主張が強い
   決定: H2をBoldからMediumに
   担当: 白井 / 10月6日まで
   録画: 15:12

3. ヘッダーの配色
   指摘: 検討したい
   決定: 今回は保留(次回のレビューで再検討)
   担当: 保留
   録画: 22:05

ポイントは3つです。

  • 「指摘」と「決定」を分けて書く。言われた言葉と、実際にやることは別物です。ここを分けておくと、解釈が間違っていた場合に早く指摘してもらえます
  • 保留を明記する。対応しないものを書いておかないと、「あれはどうなった」が後から来ます
  • 録画の秒数を書く。これで録画が使える資産になります。認識が食い違ったとき、その1分だけ見れば済みます
指摘に対して担当者と期限、対応状況を明確にしてリスト化する型は、設計レビューの分野でも標準的な運用として整理されています(デザインレビュー(DR)とは|Asana)。ビジュアルのレビューでも、残す項目は結局同じです。
決定をタスク管理に流し込むところまで自動化したい場合は、会議の議事録からタスクを自動で切り出してNotionに登録する方法にまとめています。

なぜ質問と録画がセットで効くのか

ここまでの型がなぜ効くのかを、手戻りが起きる仕組みから説明します。

修正指示の手間は84.9%の共通体験

STUDIO株式会社がWeb制作に携わるデザイナー・ディレクター464名に行った調査(2024年4月3日〜10日)で、デザインの修正指示を面倒に感じた経験が「よくある」38.6%、「たまにある」46.3%、合計84.9%という結果が出ています(STUDIO調査リリース)。
理由として挙がったのは、修正意図がわからず追加のヒアリングが発生する、修正指示の指し示す箇所がわかりづらい、クライアント企業内で意見が一致していない、といったものでした。さらに「対策は行っているが、まだ手間は発生している」57.4%、「対策ができていない」30.7%で、合計88.1%がこの手間を解決しきれていません。
9割近くが解決できていないなら、これは個人のヒアリング能力の問題ではありません。構造の問題です。構造の問題には、気合ではなく仕組みで対処します。

言葉と対象が切り離される

「ここ、ちょっと重いよね」

この発言を文字に起こすと「ここ、ちょっと重い」になります。「ここ」が持っていた情報が、書き起こした瞬間に全部抜け落ちます。

口頭の指摘は、言葉だけで成立していません。そのとき相手のカーソルがどこにあったか、画面がどこまでスクロールされていたか、どのアートボードが表示されていたか。この3つが言葉に意味を与えています。

質問1が範囲を確定させ、録画がカーソルの動きを保存する。 この2つで、切り離されるはずだった言葉と対象がつながります。

メモを取ると画面が見られない

レビューは進行が速い場面が多く、指摘は連続して出ます。書いている間に次の指摘が出て、その次も出ます。書くことと見ることは同時にできません。

結果としてメモは断片になります。「余白」「色」「ここ強く」。後から読んでも何のことか分かりません。

記録を録画に預けるのは、手を空けて質問するためです。 録画は目的ではなく、質問するための前提条件です。

Figmaのコメントに残るのは「書かれた」分だけ

Figmaはブラウザベースなので、URLを共有するだけで全員が同じファイルにアクセスでき、フィードバックを1か所に集約できます(Figmaでレビュアーができること|クラスメソッド)。カーソルチャット、音声チャット、コメントという3つの手段も用意されています。
この集約の仕組みはよくできていて、書かれたフィードバックについては、ほぼ解決しています。

問題は非対称性です。

指摘の出方残るかどこに残るか
コメント機能で書かれた指摘残るデザインファイル上の対象に紐づいて残る
チャットに書かれた指摘残る対象とは切り離されて残る
画面共有中に口頭で出た指摘残らない聞いた人の記憶とメモだけ
実務では、指摘の多くは画面共有しながら口頭で出ます。一番量が多いものが、一番残らない形になっています。 ここを埋めるのが録画と決定リストの役割です。

レビュー録画に向く道具の条件

毎回のレビューで録るなら、道具の条件が効いてきます。

条件なぜ効くか
ウィンドウ単位で録れる他案件の通知や社内情報を映さずに済む
録画時間の制限がないレビューが延びても切れない。無料アプリは5分や30分で切れるものがある
ウォーターマークが入らない制作物の上に透かしが乗ると、色や余白の判断ができない
解像度を選べるデザインの確認は1080p、記録だけなら720pでファイルを軽く
相手の声が録れる指摘は相手の口から出る。マイクだけでは自分の相槌しか残らない
最後の条件が、macOSでは意外な難関になります。相手の声はスピーカーから出る「システム音声」で、これを録るには従来、仮想オーディオドライバ(BlackHoleなど)の設定が必要でした。この設定でつまずく人は多く、BlackHole不要!Macで内部音声を簡単に録音する3つの方法に回避策をまとめています。
QurecoはMac用の画面録画アプリで、上の5条件を無料の範囲で満たします。
  • 画面全体またはウィンドウ単位を、サムネイル付きで選んで録れます
  • 仮想オーディオの設定が不要で、マイクとシステム音声を個別にオンオフできます
  • 録画時間は無制限、ウォーターマークなし。MP4 / MP3で書き出せます
  • 解像度は1080p / 720p / 480p / 360p から選べます
Qurecoの録画画面。録画するウィンドウを選び、マイクとシステム音声を個別にオンオフできる
Qureco公式サイト

Proプランでは録画からAIが議事録を生成するので、決定リストの下書きをそこから作る使い方もできます。

一つだけ注意点です。Qurecoに動画の編集機能はありません。 特定の箇所だけを切り出して共有したり、モザイクをかけたりする作業は別のツールが必要です。この記事の型は「録画は根拠として保管し、渡すのはテキスト」という前提なので問題になりませんが、録画を編集して配りたい用途には向きません。macOS専用である点も先に書いておきます。

よくある質問

録画していいか、聞きづらいです

目的から言うと通りやすくなります。「指摘を取りこぼしたくないので」「戻りを減らしたいので」と、相手にとっての利益を先に置いてください。監視や証拠という文脈に聞こえると身構えられます。社内の定例レビューなら、最初の1回だけ断って、以降はチームの運用として定着させるのが楽です。

クライアントとのレビューでも録画していいですか
必ず事前に許可を取ってください。社内の作業用に使い、共有しない範囲であることも一緒に伝えます。断られたら録りません。その場合は、質問3つと終了前の読み上げだけでも効果があります。録音・録画の法的な線引きは会議の録画・録音は違法?にまとめています。
録画を見返す時間がありません

見返さない前提で設計してください。この記事の型では、録画は「認識が食い違ったときに、該当の1分だけ見る」ためのものです。だから決定リストに秒数を書きます。通しで見る運用にすると続きません。

Figmaのコメントだけで足りるのでは

書かれたフィードバックについては足りています。足りないのは、画面共有しながら口頭で出た指摘です。実務では指摘の多くがこちらで出るので、両方を使うのが現実的です。決定リストをFigmaのコメントとして対象に紐づけて書き込めば、さらに探しやすくなります。

対面のレビューはどうすればいいですか
画面共有がない分、録音だけで足ります。Macの音声のみ録音やスマホのボイスメモで構いません。ただし紙やホワイトボードを使う場合は、指し示す動きが音声に残らないので、終了前の読み上げの重要度が上がります。対面の記録については対面会議もMacで録音してAI議事録も参考になります。

まとめ

  • 「なんか違う」が出たら、「どこの話か」「どうなっていれば正解か」「決定か意見か」の3つを、相手に語彙を求めず選ばせる形で聞く
  • 質問に集中するために、記録は録画に預ける。コツは4つ。カーソルが映る側を録る、開始時に目的を伝える、指摘の時刻を残す、終了前に決定を読み上げる
  • 終わったら10分以内に決定リストを出す。指摘と決定を分けて書き、保留を明記し、録画の秒数を添える
  • 録画はそのまま渡さない。渡すのはテキスト、録画は認識が食い違ったときに1分だけ見る根拠
  • この型が効くのは、口頭の指摘では言葉と対象が切り離されるから。「ここ」の情報はカーソルの位置にしかない
  • Figmaのコメントは書かれたフィードバックを集約できるが、話された指摘は守備範囲外。一番量が多いものが一番残らない

次のレビューで、質問を1つだけ試してみてください。おすすめは3つめの「これは決定ですか、意見ですか」です。作業量が変わります。

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この記事を書いた人

井上 峻輔

井上 峻輔

Qurio株式会社 代表取締役

AIコンサルティング会社Qurioの創設者。上智大学にてAIを専攻し、AI研究サークル「SOMA」を設立。その後、株式会社JPMTの代表として「みんプロ」(ユーザー数1,300人突破)や業務分析SaaS「Optpath」の開発を手掛ける。2025年10月にQurio株式会社を設立し、AI・データ領域の開発・コンサルティングを展開。日経フォーラム「第30回 アジアの未来」に登壇。『テクノロジーの発展を促進する』ことを信条に、AIを活用した新たな価値創出に取り組んでいる。