面談を録るかどうかの前に、決めることが4つあります。
順番を逆にすると、録ったものの消せないデータが手元に残り、どこに置くかを後から考えることになります。守秘義務を負う立場でそれをやると、判断の余地が狭まります。
この記事では、録る前に決める4項目を順に整理し、そのうえで「残すのは決定と宿題だけ」という形まで落とします。
(顧問先・相談者との面談を自分で記録したい士業の方に向けた記事です。所属会や自治体の規程で録音が禁止されている公的な相談窓口の業務、および録音を係争の証拠として使う目的には合いません。なお本記事は一般的な整理であり、法的助言ではありません。最終的な判断は、所属会のガイドラインと顧問弁護士にご確認ください)
録る前に決める4つのこと
| # | 決めること | 決めないと起きること |
|---|---|---|
| ① | この面談は録ってよいか | 録ってはいけない面談まで一律に録ってしまう |
| ② | 同意をどう取るか | 後から「聞いていない」と言われる |
| ③ | 保存先と、AIに入れる範囲 | 顧客情報が意図しない場所に渡る |
| ④ | 保管期間と、所内の共有範囲 | 消すきっかけを失い、管理責任だけが残る |
① この面談は録ってよいか
公的な相談窓口では録音が禁止されている例がある
顧問先との面談は前提が違う
一方、自分の事務所が顧問先と行う面談は、継続的な委任関係の中にあります。業務の記録を残すこと自体は通常の実務で、録音もその手段の1つです。公的窓口の匿名相談とは前提が異なります。
録らないほうがよい面談
| 録らない | 理由 |
|---|---|
| 第三者の個人情報が中心になる相談 | 相続の親族関係、従業員の個別事情など。本人の同意では足りない情報が入ります |
| 係争・紛争の可能性がある案件 | 記録の存在そのものが当事者間の論点になり得ます |
| 相手が少しでも渋った面談 | 同意が形式だけになると、関係のほうが損なわれます |
| 雑談が主目的の訪問 | 録る理由がなく、消す手間だけ増えます |
② 同意はどう取るか
伝え方
目的、使う範囲、保存先の3点を、この順で伝えると通りやすいです。
「正確に残しておきたいので、この面談を録音させてください。議事録を作るために使って、事務所の中で保管します。外部に出すことはありません」
オンライン面談で画面も録る場合は、分けて伝えます。
「資料を画面で共有いただく部分も、数字の確認のために録らせてください」
同意を記録に1行残す
口頭で取った同意は、面談記録の冒頭に1行で残します。
2026-10-15 10:00 定例面談(オンライン)
同席: 先方 代表 ◯◯様 / 当方 村瀬
録音: あり(開始時に口頭で同意取得。議事録作成目的、所内保管)
断られたときの進め方
録りません。そのうえで、記録の精度を落とさない方法があります。
③ 保存先と、AIに入れる範囲を先に決める
端末内で完結させるか、クラウドに上げるか
| 端末内に保存 | クラウドに保存 | |
|---|---|---|
| 顧客データの所在 | 事務所の端末のみ | サービス事業者のサーバー |
| 所内での共有 | 手渡しかファイルサーバー経由 | リンクで共有できる |
| 端末の故障・紛失 | データも失う | 残る |
| 向く面談 | 機微な相談、相続、労務トラブル | 定例の業務打ち合わせ |
AIに入れる情報は先に線を引く
録音データをAIに要約させるかどうかは、保存先とは別の判断です。
もっともな指摘です。線の引き方としては、こう決めておくと迷いません。
| AIに入れる | AIに入れない |
|---|---|
| 業務の進め方、スケジュール、提出物の確認 | 相続人の氏名、家族構成、親族間の事情 |
| 制度や手続きの説明部分 | 個別の従業員の懲戒・疾病に関する相談 |
| 決定事項と宿題の整理 | 係争中の案件に関するやりとり |
氏名と社名は置き換えてから投げる
顧客面談の記録に QurecoMac用の録画アプリで、無料の範囲では録画データを端末内に保存します。クラウドやAIに渡すかどうかは、Proプランを使うかどうかで事務所側が選べます。
④ 保管期間と、所内の共有範囲を決める
録音は長く持たない
録音データと議事録は、持つ期間を分けます。
- 録音: 議事録を作って内容を確認したら消す。長くても3か月
- 議事録: 業務記録として通常の保管ルールに従う
所内の誰が開けるか
税理士の守秘義務は税理士法第38条に定められ、事務所に勤務する使用人や従業員の守秘義務は第54条に定められています。義務は所内全員にかかります。
残すのは「決定」と「宿題」だけ
4項目が決まったら、記録の中身を絞ります。
残す項目
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| 決定事項 | 「今期の申告は◯◯方式で進める」 |
| 宿題 | 誰が、何を、いつまでに。先方と当方の両方を書く |
| 説明した内容 | 「◯◯制度について、適用要件と期限を説明」 |
| 提示した選択肢 | 採用しなかった案も1行で残す |
| 次回 | 日時と議題 |
残さない項目
- 発言の全文
- 相手の感情的な発言、愚痴
- 面談中に出た第三者の個人情報
- 確定していない金額の見込み
顧客に渡す議事録と、所内の記録を分ける
同じ文書を兼ねようとすると、どちらも中途半端になります。
- 顧客に渡すもの: 決定事項、宿題、次回。1ページに収める
- 所内に残すもの: 上記に加えて、説明した内容、提示した選択肢、懸念点
所内の記録には、判断の経緯が残ります。担当者が替わったときに効くのはこちらです。
面談の記録に向く道具の条件
| 条件 | なぜ効くか |
|---|---|
| 保存先を自分で選べる | 顧客データをどこに置くかは事務所が決める必要があります |
| 相手がホストの会議でも録れる | 顧問先が設定したZoomやMeetのリンクで面談することがあります |
| 音声のみで録れる | 対面の相談では画面が不要です |
| 録画時間の制限がない | 相続や労務の面談は2時間を超えることがあります |
| 一覧で管理できる | 顧問先ごとに溜まる記録を、ファイル名だけでは追えません |
- 無料の範囲では録画データを端末内に保存します。クラウドへのアップロードはProプランの機能です
- 自分の端末で録る方式なので、相手が主催するオンライン面談でも録れます
- 音声のみ録画モードがあり、対面の面談では画面なしで録れます
- 録画時間は無制限、ウォーターマークなし。録画ライブラリで一覧・再生・タイトル編集ができます
Proプラン(月額980円)では、クラウドへの自動保存、録画からのAI議事録生成、Notionへの連携が使えます。この記事の③で決めた範囲に収まる面談であれば、議事録の作成がそのまま自動化できます。
よくある質問
目的から言うと通りやすくなります。「正確に残しておきたいので」と、相手にとっての利益を先に置いてください。記録や証拠という言葉から入ると身構えられます。定例の顧問先であれば、最初の1回だけ断って、以降は事務所の運用として定着させるのが楽です。
この記事の4項目をそのまま1枚に書き出すところから始めてください。録ってよい面談の種類、同意の取り方の文例、保存先、保管期間と閲覧できる人。A4で1枚に収まります。職員が増えたときに、口頭で伝えるより確実です。
まとめ
- 録るかどうかの前に、①録ってよい面談か ②同意の取り方 ③保存先とAIに入れる範囲 ④保管期間と共有範囲の4つを決める
- 公的な相談窓口では録音が禁止されている例がある。顧問先との面談とは前提が違うことを理解したうえで、所属会のガイドラインを確認する
- 同意は目的、使う範囲、保存先の順で伝え、記録に1行残す
- 保存先は面談の種類で使い分ける。すべてをクラウドに上げる必要も、すべてを端末内に閉じる必要もない
- AIに入れる範囲は先に線を引き、社名と氏名は置き換えてから投げる
- 録音は素材。議事録を作ったら消す。長くても3か月
- 残すのは決定と宿題、説明した内容、提示した選択肢。発言の全文は残さない
まずは4項目を1枚に書き出してみてください。書き出せた時点で、次の面談から判断に迷わなくなります。
なお本記事は一般的な整理であり、法的助言ではありません。所属会のガイドライン、顧問先との契約内容、個人情報保護法の該当条文については、所属会および顧問弁護士にご確認ください。





