ゼミの議論を聞きながらノートを取ろうとして、結局どちらも中途半端に終わる。講義のほうも、スライドを写すのに追われて話の筋を追えていない。週明けに見返しても、断片しか残っていません。
録画しておけば済む話です。ところがシラバスを開くと「授業の録音・録画は禁止」と書いてある。そこで手が止まった人は多いと思います。
講義の録画は違法なのか。法律の話を先に片づける
自分の復習のために録画すること自体は、著作権法上の権利制限の範囲に収まると考えられています。ただし、それと大学のルールは別の階の話です。順に見ていきます。
復習のための録画は著作権法35条の範囲内
大学の「禁止」ルールは別の階にある
ここからが実務です。著作権法の話と、大学が定めるルールの話は別々に存在します。
ここから先は明確にアウト
線引きをはっきりさせておきます。
| 行為 | 扱い |
|---|---|
| 自分の復習のために録画し、自分だけで見る | 35条の範囲内。許可があれば学内ルールもクリア |
| 同じ授業を取っている数名に、復習目的で共有する | 35条の「授業の過程における利用」に収まると整理されている |
| 数十名から数百名に配布する | 「必要と認められる限度」を超える可能性が高い |
| SNSや動画サイトにアップロードする | 公衆送信にあたる。権利侵害 |
| 録画データを販売する、有料コンテンツにする | 論外 |
数名への共有と数十名への配布の間に線がある、というのが弁護士の整理です(前掲のSTORIA法律事務所)。友人1人に渡すのと、学年のグループチャットに投げるのは別の行為だと考えてください。
許可の取り方。一文でいい
許可を取るのは、想像よりずっと軽い作業です。身構えて先延ばしにするほうが損をします。
誰に、いつ頼むか
学期の途中で頼むと「今まで録っていたのでは」と疑われる余地が生まれます。最初に聞いておけば、その後の全回について気にせず済みます。
通りやすい頼み方の3要素
断られる理由のほとんどは「どう使われるか分からない」ことへの懸念です。であれば、先に答えておけば済みます。次の3つを入れてください。
- 目的: 自分の復習のためであること
- 範囲: 自分だけで使い、他人に共有しないこと
- 扱い: いつ消すか(学期末、単位取得後など)
そのまま使える形にすると、こうなります。
○○先生
○○学の講義を履修している、○○学部3年の○○です。
講義の内容を自分で復習するために、講義の録画(または録音)を取らせていただけないでしょうか。録ったデータは自分の復習のみに使い、他の人に共有したり外部に公開したりはしません。学期末の成績確定後に削除します。
差し支えがあれば、音声のみ、あるいは板書の撮影だけでも構いません。ご判断をお願いできますと幸いです。
断られたときは引き下がる
断られることもあります。そして、その理由には正当なものが少なくありません。
断られた場合の代替はこうなります。
- 音声のみなら許可が出ることがある。映像より心理的な抵抗が小さい
- 自分の発言部分だけを録る(ゼミの発表など)
- 板書やスライドの撮影だけ許可をもらう
- 講義直後の5分で音声メモを残す。記憶が新しいうちの独り言でも、後から十分使える
録画ボタンがない講義を、どう記録するか
許可が取れたとして、次の壁があります。押すべき録画ボタンが、こちらの画面に無いことです。
受講する側で記録するなら QurecoZoom や Google Meet の録画機能は主催者側の権限で、参加者は使えません。Qurecoは自分のMacの画面を録るので、配信側の設定に左右されません。仮想オーディオの設定なしでシステム音声が録れて、録画時間は無制限、ウォーターマークもなしで無料から使えます。
参加者側に録画権限はない
自分の端末の画面録画なら、配信側の権限が要らない
現実的な解は、自分のパソコンの画面をそのまま録ることです。配信側の設定に依存しないので、講義でもゼミでもウェビナーでも同じやり方が使えます。
Command + Shift + 5)でも画面録画はできますが、スピーカーから出る音、つまり教員の声を録るには追加の設定が必要です。ここでつまずく人が多い部分なので、設定なしでシステム音声が録れるアプリを使うほうが速く済みます。音声だけで足りる講義もある
録画をノートに変える4ステップ
録りっぱなしのデータは、見返されません。90分の動画を再生し直すくらいなら、教科書を読んだほうが速いからです。ノートにするところまでを1セットにしてください。
① 文字起こしする
② 要約に落とす
要約に落とすときは、講義という形式に合わせて指示を出します。
- 今日の講義の主題を1文で
- 扱われた論点を3〜5個、それぞれ2〜3行で
- 教員が「重要」「試験に出る」と言った箇所
- 参照された文献・人名・年号
3つ目が効きます。講義中は聞き流していても、テキストに残っていれば拾えます。
③ 用語・固有名詞・数式を拾い直す
要約を読みながら、知らない用語が出てきたら元の音声の該当箇所を聞き直してください。この確認作業自体が復習になります。数式や図が中心の講義では、この工程で映像が必要になるので、音声のみではなく録画を選んでおくと安全です。
④ 科目別に貯める
週の運用に落とす
続かない方法は意味がないので、時間まで決めてしまいます。
| タイミング | かける時間 | やること |
|---|---|---|
| 講義直後 | 5分 | 録画を保存し、AIに要約を出させる。ファイル名を「科目名_第○回_日付」に統一 |
| 週末 | 20分 | 要約を読み、知らない用語を確認。分からない点に印をつける |
| 試験2週間前 | 60分 | 全回の要約を通読し、論点の一覧を作る |
| 成績確定後 | 5分 | 録画データを削除する |
最後の行を運用に入れておいてください。約束した削除を実行することが、次の学期にまた許可をもらえるかどうかにつながります。ストレージの節約にもなります。
よくある質問
映像込みで録ると、720p・90分でおよそ3GB前後です。週3コマで15回の学期だと100GBを超えます。音声のみなら1コマ数十MBで済むので、映像が要らない講義は音声のみを選んでください。
同じ授業を履修している数名に、復習目的で渡す範囲であれば、35条の「授業の過程における利用」に収まると整理されています。ただし学年全体のグループチャットに投げるのは別の行為です。そして、教員に「共有しない」と伝えて許可を得た場合は、法律以前に約束の問題になります。
許可を取る流れは同じですが、録音機材が変わります。対面では教室の後方だと音を拾いきれないため、前方の席に座るか、スマートフォンを教壇に近い位置に置く工夫が必要です。また、周囲の学生の私語や発言も入るため、共有の扱いはオンライン以上に慎重にしてください。
まとめ
- 自分の復習のための録画は、著作権法35条の対象に「授業を受ける者」が含まれるため、権利制限の範囲内と整理されている
- ただし大学のルールは別の階にある。多くは「担当教員の許可なく」という条件付きなので、許可を取れば問題は消える
- 頼み方は目的・範囲・扱い(いつ消すか)の3要素。音声のみでも構わないと添えると通りやすい。断られる理由には正当なものがあるので引き下がる
- Zoom や Meet の録画は主催者の権限。自分の端末の画面録画なら配信側の設定に左右されない
- 録りっぱなしは見返さない。文字起こし → 要約 → 用語の確認 → 科目別に蓄積まで含めて1セットにする
次の講義が終わったら、その場で一言聞いてみてください。断られてもその場で終わる話ですし、通れば残りの十数回すべてが記録に変わります。





