「それ、前回もお話ししましたよね」
1on1でこう言われて、前回何を約束したのか思い出せなかったことはないでしょうか。手元のメモを探しても、月ごとにバラバラのファイルに散っていて、その場では見つからない。
記録がないわけではないと思います。残し方が1on1向きになっていないだけです。
1on1は、毎回同じ相手と前回の続きを話す唯一の定例です。それなのに記録の作り方は、参加者が入れ替わる普通の会議と同じままになっている。この記事では、残す項目を3つに絞り、会議中は書かず、前回の続きから話せる状態にする方法を書きます。
1on1の記録が続かない本当の理由
書くと、相手が話さなくなる
思い当たる場面があるはずです。相談の核心に入りかけたところでキーボードを打ち始めると、相手の話す速度が落ちる。画面に視線を移している数秒、相手はこちらを見て待っています。
全部残すと、評価の材料に見える
もうひとつの問題は、記録の量です。
逐語の文字起こしを残していると、本人が読んだときに面談の記録ではなく監視の記録に見えることがあります。「評価には使いません」と口で言っていても、残っているものが全発言なら、そう読まれても仕方がありません。
それでも記録がないと、同じ話を繰り返す
一方で、記録をやめてしまうと1on1は毎回リセットされます。
隔週30分でメンバーが6人いれば、同じ人と次に話すのは2週間後です。その間に他の5人と1on1をして、通常業務も回している。前回の約束を覚えていられる量ではありません。
つまり必要なのは「増やす」ではなく「絞って繋げる」
ここまでを整理すると、1on1の記録には相反する条件がかかっています。
- 会議中に書くと、相手が話さなくなる
- 全部残すと、評価の材料に見える
- 何も残さないと、前回と繋がらない
残すのは3項目だけ
1on1で残す価値があるのは、次の3つだけです。
① 約束(次までに誰が何をするか)
「あの件、調べておきます」「来週の会議で提案してみます」のような、次回までのアクションです。
② 持ち越し(今日決めきれなかった論点)
結論が出なかったことを残すのが肝心です。
③ 変化の兆し(前回と違うと感じた点)
- ◯「今日は自分から話題を出さなかった」
- ×「モチベーションが下がっている」
前者は観察した事実、後者は解釈です。解釈を書き始めると、記録は評価メモに変わります。事実だけ残しておけば、3回分並んだときに自分で判断できます。
3項目の書き方
| 項目 | 書く例 | 書かない例 |
|---|---|---|
| 約束 | 「(自分)来週までに他部署の担当者を紹介する」 | 「連携について話した」 |
| 持ち越し | 「異動希望の結論は出さず、次回改めて話す」 | 「キャリアの話をした」 |
| 変化の兆し | 「今日は自分から話題を出さなかった」 | 「元気がなさそうだった」 |
3項目なら、1回の1on1あたり5行から10行で収まります。この分量なら続きます。
記録は本人に共有する前提にする
共有すると決めるだけで、書けない内容は自然に落ちます。本人に見せられない記録は、そもそも1on1の記録として持つべきものではない、という線引きが自動的に働きます。
残さないものを決めておく
| 残さないもの | 理由 |
|---|---|
| 評価に使える発言 | 記録が評価資料に転用される懸念を作る。本人が読んだときに萎縮する |
| 他人の話(他メンバーへの不満や噂) | 本人の同意なく第三者の情報が残る。共有もできない |
| 体調・家庭など私的な事情 | 配慮のために聞いた話であって、記録して蓄積するものではない |
消す基準も先に決める
記録を作るなら、消すルールも一緒に決めておきます。
- 1on1のログをいつまで持つか(たとえば1年、または在籍中)
- 異動や退職のときにどう扱うか
- アクセスできるのは誰か(自分だけか、次の上司に引き継ぐのか)
決めておかないと、何年分ものログが誰の管理下にあるのか分からない状態になります。
「評価に使わない」は、言うだけでは足りない
宣言と運用を揃えます。具体的には次の2つです。
- 記録の置き場所を評価資料と物理的に分ける。同じフォルダに評価シートと1on1ログが並んでいる状態は避ける
- 引き継ぐときは本人に伝える。上司が変わるときに黙って渡すのが、いちばん信頼を失う
会議中に書かない段取り
残す項目が決まったら、書くタイミングを変えます。30分の1on1なら、こういう配分になります。
| タイミング | 時間 | やること |
|---|---|---|
| 開始前 | 30秒 | 前回の3項目を読み上げる |
| 本編 | 30分 | 書かない。手元は閉じる |
| 終了後 | 3分 | 3項目だけ書く |
開始前30秒で、前回を読み上げる
ここがこの運用の中心です。
「前回は、私が他部署の担当者を紹介する約束でした。異動の話は結論を出さずに持ち越していました」
これを冒頭で言えるだけで、1on1は前回の続きから始まります。記録が「使われる」瞬間を作らないと、記録はただ溜まるだけになります。読み上げるのは直前の1件で十分です。
本編は書かない
手元を閉じて、聞くことに使います。3項目だけ残すと決めていれば、会議中に書き留めておくべきことはほとんどありません。約束は印象に残りますし、持ち越しは会話の流れで分かります。
終了後3分で書く
1on1が終わったら、次の予定に移る前に3分だけ取ります。記憶が新しいうちなら、3項目は3分で書けます。
終了後3分が取れない日のために
現実には、1on1のあとすぐ次の会議が入っている日があります。その日のために、音声を残しておく選択肢があります。次のセクションで扱います。
録るかどうかは、部下に決めてもらう
音声を残す話をする前に、順番を確認します。
順番を間違えない
- まず記録の目的を伝える。「評価のためではなく、前回の続きから話すため」
- 残す内容を伝える。「約束と持ち越し、それに気づいたことだけメモに残す」
- 誰が見るかを伝える。「私が見ます。メモはそのまま共有します」
- そのうえで録っていいか聞く。断られたら録らない
断られても困りません。終了後3分の書き起こしで足ります。録音は、その3分が取れない日の保険です。
1on1では画面を録る必要がない
見落とされがちですが、1on1で必要なのは音声だけです。
伝え方の例文
そのまま使える形にしておきます。
前回の約束を忘れてしまうことがあるので、音声だけ記録して、約束と持ち越しだけメモに残したいと思っています。評価には使いません。メモはそのまま共有します。嫌なら録りません。
手を動かさずに3項目を残す
音声を残しておく場合、流れは3つです。
- 録る: 1on1の間、音声だけ記録する
- まとめる: 終わったら、約束・持ち越し・変化の兆しの3項目に落とす
- 置く: 人ごとの場所に積む
2の作業を毎回自分でやると、結局続きません。ここを自動にできると運用が回ります。
- 音声のみの録音モードがあるので、画面を録らずに済みます。1on1ではこれが効きます
- AI議事録のテンプレートをカスタマイズできるので、出力を約束・持ち越し・変化の兆しの3項目に寄せられます。逐語の文字起こしをそのまま残す必要がありません
- 話者識別があるので、2人の会話で「どちらの宿題か」が分かれて残ります
- Notionに送れるので、人ごとのページに時系列で積めます
録画と録音そのものは無料で、時間の制限もウォーターマークもありません。AI議事録の生成とNotion連携はProプラン(月額980円のローンチ価格、2週間無料でクレジットカードの登録も不要)です。
正直なところを書くと、macOS専用でWindows版はまだありません。また、AIがまとめた3項目は事実の抽出までで、解釈は自分で足す必要があります。そこは変わりません。
人ごとの時系列で追えるようにする
最後に置き場所です。ここを間違えると、記録があっても使えません。
会議単位ではなく人単位で並べる
- ◯ 「Aさん」のページ → 9/4、8/21、8/7 のログが並ぶ
- ×「議事録」のページ → 全メンバー・全会議が日付順に並ぶ
1on1の直前に見るのは、その人の直前の1件だけです。それが3秒で開ける場所にあるかどうかで、運用が続くかが決まります。
3ヶ月に1回、まとめて読み返す
蓄積を活かすなら、3ヶ月ごとに1人分をまとめて読み返します。見るのは3点です。
- 約束が守られているか(自分の宿題を含む)
- 持ち越しが放置されていないか
- 変化の兆しが続いているか、単発だったか
評価のためではなく、次の1on1で何を話すかの準備として読みます。単発の「今日は発言が少なかった」は気にしなくていい。3回続いていたら、それは話題にする価値があります。
よくある質問
記録できます。この記事の運用の中心は「3項目に絞る」ことと「開始前30秒で前回を読み上げる」ことで、録音は終了後3分が取れない日の保険です。断られたら録らないでください。断られたこと自体も、記録に残す必要はありません。
1on1に限れば、残さないほうが運用しやすいと思います。本人に共有しにくくなり、読み返す時間もかかります。文字起こしを作る場合は、3項目のメモを作るための材料として使い、メモができたら文字起こし側は消す運用が扱いやすいです。
組織全体で1on1を運用するなら、リマインダーやコンディションの推移が見えるツールに価値があります。ただ、導入には稟議と時間がかかります。この記事の内容は、マネージャー1人が次の1on1から始められる範囲に絞っています。まず自分の運用で形を作ってから、組織に広げるほうが失敗が少ないはずです。
まとめ
- 1on1の記録が続かないのは、書く量が多いから。会議中に書くと相手が話さなくなり、全部残すと評価の材料に見える
- 残すのは約束・持ち越し・変化の兆しの3項目だけ。1回5行から10行で足りる
- 残さないものを先に決める。評価に使える発言、他人の話、私的な事情は残さない。聞くけれど残さない
- 会議中は書かない。開始前30秒で前回を読み上げ、終了後3分で3項目を書く
- 録るかどうかは部下に決めてもらう。録るなら画面は要らない、音声だけ
- 記録は人ごとの時系列に積み、直前の1件を次回の冒頭で使う
1on1の記録は、溜めることが目的ではありません。次の1on1の最初の30秒で使えるかどうかだけが基準です。次の1on1から、3項目だけ書いてみてください。





