「議事録は新人の仕事」はもう終わりでいい|議事録係を置かない会議のつくり方

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「議事録は新人の仕事」はもう終わりでいい|議事録係を置かない会議のつくり方

会議が終わって全員が退出したあと、2年目の部下だけが画面の前に残っています。提出は翌日の午前になることが多く、上がってきたものは発言の順番どおりに並んでいて、決まったことがどこに書いてあるのか探すのに少し時間がかかります。

自分が新人のころも同じことをやっていたので、そのまま続けさせている。けれど、これが本当に本人のためなのかと聞かれると、はっきりとは答えられない。

この記事では議事録の書き方は扱いません。議事録係を置くという運用そのものを、時間のデータと育成効果の中身から見直します。
なお、株主総会や取締役会の議事録は会社法で作成と保存が義務づけられています。ここで扱うのは、社内の定例やプロジェクト会議など、法定の要件がない会議の記録に限った話です。

20代は、週に8.46時間を議事録に使っている

年間320時間という規模

キヤノンマーケティングジャパンが、勤め先に議事録作成業務がある全国のビジネスパーソンを対象に実施した調査があります(ビジネスパーソンが議事録作成に費やす時間は年平均320時間|マイナビニュース)。
項目数値
議事録作成にかける時間(週平均)6.13時間
年間換算319.6時間
作成業務に負担を感じている人67.2%
20代の作成時間(週平均)8.46時間
支援ツールを使いたい人72.6%
実際に利用している人1.4%
20代の週8.46時間は、年間に直すと約440時間です。年間労働時間を2,000時間とすれば、2割強を議事録に使っている計算になります。

新人の2割の時間を何に投資するかは、育成方針そのものです。それが会議の書き起こしでよいのかどうか、意識して選んだ組織は多くないはずです。

2.5時間のうち、どこに時間が消えているか

1時間の会議に対して、議事録に関わる作業には平均150分ほどが充てられるとされています。内訳はメモ取りに約30分、文字起こしに60〜70分、残りが要点の整理です(議事録作成にかかる時間の目安は?|FitGapマガジン)。
つまり最も重い工程は文字起こしで、全体の半分近くを占めています。会議が1時間なのに、その後の作業が2.5時間かかる構造です。

使いたい72.6%、使えている1.4%

先の調査で注目したいのは最後の2行です。支援ツールを使いたい人は72.6%いるのに、実際に使っている人は1.4%しかいません。

この差は、反対されているからではなく、誰も切り替えを決めていないから生まれています。慣習は意思決定ではなく惰性で続きます。それを止められるのは、会議を主催している側です。

「議事録を書かせると育つ」は、どこまで本当か

支持する側の主張には根拠がある

まず、この慣習を支持する主張を正確に置いておきます。

若手に議事録を任せる目的は、作成の過程で会議の内容と発言者の意図を理解させることにある、と説明されています。会議に出てくる用語や業務内容を正しく把握する必要があるため、スキルが身につき成長が速くなる。上司の側から見れば、提出された議事録によって理解度・要約力・編集力を評価できる(新卒・若手向け|わかりやすい議事録の作り方|ACES Meet)。

これは正しいと思います。議事録を書こうとすると、聞き流していた言葉を調べざるを得なくなり、話の構造を自分で組み立て直すことになります。会議に座っているだけでは得られない負荷がかかります。

育っているのは、判断の工程

そのうえで、効果がどこから生まれているのかを分けてみます。

工程所要時間の目安育成効果
会議中のメモ取り約30分中。何を書くか選ぶ判断が入る
録音からの文字起こし60〜70分ほぼなし。聞いて打つ作業
要点の整理・決定事項の抽出残り高い。重要度の判断そのもの
体裁を整えて提出数十分低い。フォーマットの作業
育成効果があるのは何が重要かを判断する工程です。用語を覚えるのも、話の構造を掴むのも、この部分から来ています。

一方、文字起こしの60〜70分で身につくものはほとんどありません。聞こえた言葉を打ち込む作業に判断は含まれていないからです。ここが、慣習を続けるか変えるかの分かれ目になります。

分ければ、負担だけ外せる

やることは単純です。判断の工程は若手に残し、文字起こしと体裁の工程を人から外す。

育成の効果を維持したまま、週8.46時間のうち半分以上を取り戻せます。取り戻した時間は、顧客と話す、手を動かす、自分の担当を持つといったことに回せます。

記録を人から外しても、記録は消えない

「議事録係をやめる」と言うと、記録が無くなると受け取られがちです。実際には記録の形が変わるだけです。

記録の置き換えなら Qureco
Macの画面をそのまま録画し、録画からAIが議事録を生成します。会議にボットを招待する必要がないので、相手に告知するのは「録画します」の一言だけで済みます。録画は無料・時間無制限・ウォーターマークなしで試せます。

日産は議事録を廃止して、写真を配っている

実在する例があります。日産自動車の会議手法「V-up」では、議事録を作りません(議事録は廃止?無駄をなくす有名グローバル企業の会議の効率化策5選|LIGHTWORKS)。
廃止した理由は、面倒だからではありません。議事録の作成に時間がかかるうえ、部門間の対立でなかなか完成せず、ドラフトを回すと発言の意図や決定事項について訂正の要望が次々に出て、何のために会議を開いたのか分からなくなることがあったためだと説明されています。
代わりに何をしているか。無記名の付箋を大きな模造紙に貼って議論を進め、その模造紙を写真に撮って参加者と関係者に配布しています。写真には解釈の余地がないので、訂正の往復が起きません。
記録を無くしたのではなく、解釈が入らない記録に置き換えたわけです。

いまなら、録画と自動文字起こしが同じ役割を果たす

同じ構造を、オンライン会議でそのまま再現できます。録画は、模造紙の写真と同じで解釈が入りません。「言った言わない」が起きたときに戻れる原本になります。

そのうえで、AIに要約させれば読む用の文書も手に入ります。人の手が触れるのは、その要約を確認する数分だけです。

Qurecoの録画画面。録画するウィンドウを選び、マイクとシステム音声を個別にON/OFFできる
Qureco公式サイト
ボットを会議に招待する形のツールもありますが、社外の相手が同席する会議では説明が必要になったり、参加者一覧に見慣れない名前が並ぶことを嫌がられたりします。自分の端末で録画する方式なら、その調整が要りません。会議にボットを入れない記録方法はボットを招待せずに会議を記録する方法にまとめています。

若手に残すのは「決定事項とネクストアクションの3行」

記録を仕組みに任せたうえで、若手には判断の工程だけを残します。提出物はこの3行です。

  1. 決まったこと(決まらなかったことも1行で)
  2. 次に誰が何をするか、いつまでに
  3. 持ち越しになった論点

この3行は、書き起こしよりも難しい作業です。1時間の会議から重要な3つを選ぶには、全体の構造を理解している必要があります。育成として狙っていたものは、むしろここに濃く残ります。

そして読む側にとっても、こちらのほうが役に立ちます。決定事項の抽出についてはコンサルの議事録は「決定と宿題」だけでいいで詳しく書いています。

来週の定例から変える3ステップ

全社で一斉に変える必要はありません。1つの会議から試せます。

① 対象の会議を1つだけ決める

最初に選ぶべきは、社内の定例で、参加者が固定されていて、法的な記録要件がない会議です。顧客が同席する商談や、人事評価に関わる面談は後回しにしてください。

② 参加者に先に伝える

録画は黙って始めないでください。定例の冒頭で一言伝えれば足ります。

「今日から議事録の代わりに録画を残します。書き起こしはAIに任せて、共有するのは決定事項だけにします。録画は社内のメンバーだけが見られる場所に置きます」

伝えるべきは3点です。何のために録るのか、誰が見られるのか、いつまで残すのか。この3つが分かっていれば、たいていの抵抗は消えます。

③ 提出物を3行に変える

若手に伝える内容も変えます。「議事録を書いておいて」ではなく、「この会議で決まったことと、次のアクションを3行にまとめて」に置き換えます。

書き起こしが不要になったことを明示するのも忘れないでください。伝えないまま運用を変えると、録画とこれまでの議事録の両方を作ってしまい、かえって負担が増えます。

移行前移行後
会議中メモを取ることに集中議論に参加する
会議後録音を聞いて文字起こし(60〜70分)録画を保存、AIが要約
提出物発言録に近い議事録決定事項とアクションの3行
若手の負荷週8.46時間会議あたり10分程度
原本個人のメモと記憶録画そのもの

切り替えるときに、気になること

実際に変えようとすると、いくつか引っかかる点が出てくると思います。よく挙がるものを先に書いておきます。

新人が育たなくなりませんか

いちばん多い心配だと思います。ただ、育成につながっているのは判断の工程なので、そこを残しておけば効果は変わりません。1時間の話から3つを選ぶのは、全文を書き写すよりも重要度の判断を求められる作業です。提出された3行を読めば、理解度を確かめるという目的もこれまでどおり果たせます。

誰も会議の内容を把握しなくなりませんか

むしろ逆のことが起きやすいです。発言順に並んだ長い議事録は、正直なところあまり読まれていません。3行なら目を通してもらえます。詳しく知りたい人は録画に戻れるので、情報が減るわけでもありません。

録画されると発言しにくくなりませんか
これは実際に起こります。人事や評価に関わる話題、個人の事情を含む相談では、録画があると分かっているだけで話す内容が変わります。だからこそ対象の会議を選ぶことが大事で、すべてを録る運用はおすすめしません。1on1のように機微な話題を含む場での線引きは1on1のメモは3項目だけ残すで書いています。
全部の会議を録ることになりますか

いいえ、その必要はありません。定例とプロジェクト会議から始めて、うまくいった範囲だけ広げていくのが現実的です。録画が溜まると保存容量も気になってくるので、残す期間をあらかじめ決めておくと運用が楽になります。

議事録の体裁を求める取引先にはどうしましょう

相手に決まった形式があるなら、それに合わせるのがいちばんです。その場合でも、書き起こしの工程は外せます。AIが生成した要約を先方の様式に整える形になるので、ゼロから書くのとは所要時間がかなり違ってきます。

やってみて合わなかったら

元に戻せます。1つの会議で試すことをおすすめしているのはそのためで、うまくいかなければ次回から議事録に戻せば済む話です。失うものが小さいうちに試せる変更だと思ってください。

一つだけ注意点です。AI議事録の生成とNotion連携はProプランの機能で、無料版でできるのは録画とファイルの書き出しまでです。まず録画への置き換えだけを無料で試して、要約まで自動化したくなった段階でProを検討する、という順序で問題ありません。Proは2週間無料、クレジットカードの登録も不要です。

まとめ

  • 議事録作成にかかる時間は週平均6.13時間、年間319.6時間。20代は週8.46時間で、年間約440時間にのぼる
  • 1時間の会議に対する議事録作業は約2.5時間。うち文字起こしが60〜70分を占める
  • 「議事録を書かせると育つ」は正しい。ただし育っているのは何が重要かを判断する工程であって、文字起こしではない
  • 日産自動車は議事録を廃止し、模造紙の写真配布に置き換えている。記録を無くしたのではなく、解釈が入らない形に変えた
  • 移行は会議を1つ選ぶ → 参加者に伝える → 提出物を3行に変えるの3ステップ。若手に残すのは決定事項とネクストアクション

来週の定例を1つ選んで、冒頭で一言伝えてみてください。うまくいかなければ元に戻せますが、たいていの場合、最初に気づくのは会議中に部下が顔を上げて話すようになったことのほうです。

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この記事を書いた人

井上 峻輔

井上 峻輔

Qurio株式会社 代表取締役

AIコンサルティング会社Qurioの創設者。上智大学にてAIを専攻し、AI研究サークル「SOMA」を設立。その後、株式会社JPMTの代表として「みんプロ」(ユーザー数1,300人突破)や業務分析SaaS「Optpath」の開発を手掛ける。2025年10月にQurio株式会社を設立し、AI・データ領域の開発・コンサルティングを展開。日経フォーラム「第30回 アジアの未来」に登壇。『テクノロジーの発展を促進する』ことを信条に、AIを活用した新たな価値創出に取り組んでいる。